16歳、煙草を吸う。


 修学旅行。

 その土地を学ぼう、という建前を持ってただ旅行をする行事。

 個人的にはグールプわけだなんだでめんどくさくてあまり好きではない。

 それに基本徒歩だ。学生にタクシーなんて高価な移動手段も使えるはずもなく、文化部で体力ゼロな私には中々厳しい行事である。

 それに行き先は10月の北海道ときた。冬眠させてくれ。

 そして何よりも問題なのが部屋割りだ。最悪なことに七人部屋。いつも仲良くしている子がたった一人の私にとってグループに入るのは北海道の冬よりも厳しいのだ。

 修学旅行当日

 運良く部屋割りは決まったは良いものの部屋の中はグループで完全に分けられてしまっている。 

 そして何より私の友人が熱を出し、今はこの部屋に居ない。部屋に居づらくなって、ベランダに出る。

 「さぶっ。」

 満点の星空を眺めながらため息をついていると


 “ガラガラッ”


 誰かがベランダに入ってきた。

 「寒いですねぇ。」

 彼女はそう言って私の隣に並ぶ。

 彼女は確か理奈ちゃんだ。うちのクラスで美人で有名な人。話したことはない。自分とは全く違う人種なんでね。

 「こんな時は吸いたくなりますねぇ、煙草。」

 「えっ。」

 そう言って彼女は指でタバコを持つ仕草をし、


 “カチッ”


 そう言って火を付ける真似をする。子供がよくやるやつだ。

 そして、形のないタバコを深く吸って

 「はぁー」

 と吐いた。

 吐いた息は北海道の寒さで白く本物のタバコのようだ。

 「一本いかがです?優理ちゃん。」

 そう言って私も煙草を吸った。

 名前覚えてるんだ。

 「たまには悪くないですね、煙草。」

 「ふふっ、そうでしょうよ。」


 初めて吸った煙草は想像してるよりもずっとうまかった。

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