希死概念

希死概念

私は死にたかった。

自殺をしたかった。

だが、そんな勇気もやり方も分からない。

最近になって、独りだと気づいた部屋には誰もいない。学校には、数人だが心から友達と言える人達がいる。

だが私は独りだ。本心を本音を言い合える人など、どこにもいない。

昔、ある友人がいた。友人よりも上で、恋愛で言うのであれば、その友人は「元恋人」にあたる。

だが、小学生だった私は、恋人というよりか女友達というのが、しっくりくる。

その女友達を「れな」と呼ぶ。

れなは幼い時に小学生の時に亡くなってしまった。

れなは戻って来なかった。

理由を考えるには、私はまだ幼すぎた。


れなが亡くなって十年の月日が経った。

あっという間だった。

私は、もう十八という歳を重ねていた、れなを忘れた事など一度もなかった。

忘れたくても、そうさせないように思考と悪夢が私を許さなかった。

私は、生きたいと思った事は、正直あまりない。

ただ、今すぐ消えてしまいたいと思う夜は何度もあった。それでも私は、朝になると学校へ行き、何事もなかったように笑ってしまう。

死にたいのに死ねない。

その問いにある感情に、名前があることを最近になって知った。れなもこんなふうに考えていたのだろうか。

それとも私は、れなの気持ちを勝手に、重ねているだけだろうか。

分からない。

だが、れながいなくなった世界で、私はずっと、境界線の上に立っている。


変わることのない朝。

私の気持ちも変わることが無い、二度と消えない闇。

れなを思い出す度、死にたい気持ちと生きなければならない自分が交錯する。もう十年も経ったのに、私はまだあの夜の境界線の上に立っている。今日も学校へ行き、誰も気にしない日常に紛れ込む。

笑って、会話して、友人の声に反応する。

しかし、心の底はまだ孤独だ。思考と悪夢は、私を許してはくれない。

「どうして生きているんだろう」

そんな問いが頭を駆け巡る。れなも同じように苦しんでいたのだろうか。

それは、私には二度と答えが出ない問である。


希死概念

それが私だ。

死にたくても死ねない、苦しくても誰にも言えない。だが、どうしても生きてしまう。

そんな矛盾を抱えて歩み続けるだろう。





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希死概念 @jupqej-2qyfsu-Vurnaz

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