画数社会

フランヌ

第1話 一長一短

29XX年12月25日

この世界は『画数が多ければ多いほど地位が高い世界』である

子供が産まれた場合、親が名を決める訳ではなく、政府がその家の「貢献度」によって名前を付ける、俺の名前は『さとる』この世界に『苗字過去の地位』などない

周りを見渡せば『鳳凰ほうおう』や『鰻鱺れいばん』などの紋章を掲げている高層ビル群である、そこに住む者『多画数層ハイ・カウント』からしたら今日は神に感謝する日だろう、だが俺のような「二画」の民から、今日はただの苦痛に過ぎない、かつて『クリスマス』と呼ばれた今日のイベントはただの『拷問日』に過ぎない

この物語は、この歪みきった世界画数社会を「完了」させる物語である


「止まれ、そこの『少画数層ロー・カウント』名を言え」

豪華なコートに身を包んだ警護兵がとても重そうな槍を突きつけてきた


さとるは古びた布のフードをあげ言った

さとるさとる、総画数二画だ」

?「さとるだと?とめはねを付けただけのゴミが、見ていろこれが政府からたまわった『ごう』の重みだ!」


この世界は1人1人に技を所持しているその技は「自分自身の名前」がそのまま攻撃として繰り出される、勿論この技にも階級がある、それもまた『画数』だ画数が多ければ多ければ攻撃力が高い攻撃が繰り出せる


ごうという警護兵が豪の最終画を描き終わる瞬間、さとるは言った

さとる「その一画、あまりに遅過ぎて笑ってしまうよ」


さとるは身につけている布の中にある唯一のポケットから使い古した、『小筆こひつ』を取り出した、そして、さとるごうの懐に潜り込んだ

彼の攻撃はシンプルでありとても鋭い


一画目:

一閃、横に走る鋭い「とめ」それは、ごうの槍を僅かに小突き、軌道を強引に逸らした


ごう「俺のプレッシャーを逸らした…だと?」

さとる「二画目これで、だ」

さとるは懐のさらに奥、ごうの鼓動が聞こえる距離まで踏み込む

逆手に持ち替えた小筆が、下から上へと鋭く跳ね上がった

青白い閃光が、ごうの喉元から胸元にかけて、政府が授けた「ごう」の刺繍ししゅうを真っ二つに引き裂く、彼が所持していた槍は無惨にも地面へと転がり、ごうはその場に膝をついた自分の名前さえ満足に維持できないほど、彼の「地位」と「力」が崩壊していく音がした

さとるは小筆についた血を払い、再び布のポケットへと仕舞う

背後の高層ビルでは、豪華な「鳳凰」の紋章が、この惨劇など知らぬげにクリスマスを祝う光を放っていた


さとる「『一長一短』あんたの画数は確かに重いが、書くのが遅すぎる、俺にとっては、二画もあればあんたの名前を終わらせるには十分だ」


雪が、激しく降り始めた


さとる「見ていろ、この二画で、この世界画数社会を書き換えてやる」


ゴーン

聖夜の鐘が、まるで敗者への弔いのように遠くで鳴り響いた


次回:同病相憐

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