港町のパン屋を舞台に、人の心が「途中のまま」立ち寄っては去っていく瞬間を丁寧に描いた作品です。出来事は小さく、会話も控えめですが、海の光や匂い、音の描写が感情の揺れを自然に浮かび上がらせます。店主は誰かを救おうとせず、答えも与えない。ただそこに在り続けることで、読者に余韻を残します。静かな物語や雰囲気重視の作品が好きな人に、強くおすすめしたい一編です。