ナイトタウン

熱狛黎愛

第1話 洋風の紅白

聖なる夜であるクリスマスに、白い雪が桜のように降る。何ともロマンチックな風景の中に、一人の少女がいた。誰もが振り向いた。何故か。その少女を見るために。その少女は、余りにも美しかった。二重瞼の鳶色の瞳と同色のミディアムヘア。新雪を閉じ込めたような肌。すらりとした体は、クリスマスらしいコートとミニスカート、そしてタイツとショートブーツに包まれている。

私の名前は叶天 幽香〈かなた ゆうか〉。

文武両道の美少女だ。

私は人気のない場所を好む為、夜は一人で散歩をする。そんな私は、前述の通りクリスマスに一人で散歩をしていた。何時も通りの夜だった。

私は、そう勘違いしていたのだ。

物心付いた時から変わった力があった。様々な

物を見る目だ。私は、この力が特別な物だと考えている。だが、とある日、

寧々屋命〈ねねや みこと〉という女に出会った。あいつは私より頭もよく、運動が得意だった。極めつけに、私より美しかったのだ。

そんなあいつに私は嫉妬した。そして私は、この力を初めて人に話した。ようするに、ただの自慢だ。それを聞いたあいつは語った。

『叶天さん。貴方はその力が何か分かる?』

『それは貴方が貴方であるという証拠なの?』

『貴方は、自分と向き合った事がある?』

『貴方は、自分が今、どれ程愚かな事をしたか分かる?』

【その力は、貴方が触れてはいけないでしょ?】

だからもう忘れて――。彼女はそう語った。

意味が、分からなかった。だが、今、分かった。

いや、分かってしまった。目の前の惨状を見て。

血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血

目の前で、血のついた袋を担ぎ、斧を振り上げる黒いサンタに、子供が虐殺されていた。

嗚呼、私は、本当に私は、

「こんな夜が好きなの・・・?」

これは、愚かな私が、夜の闇に沈んでいく物語。

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