クリスマス三つ巴ばかやろう大戦🎄
初美陽一@10月18日に書籍発売です
(1/3)一人目:童顔大学生トモのメスガキ女装ドッキリ事件
オレの名はトモ。大学一回生だけど、いまだに中学生に間違われるほどの童顔と低身長がコンプレックス。
あとあまりにも意外すぎることに彼女はいない。世界三大怪奇の一つに数えられるほどのミステリーだ。求むクールで知的な美人メガネっこ名探偵。
さて、そんなオレは今、高校時代からの親友のマンションに遊びに来ている。あいつも彼女がいないのは知ってるし、寂しいクリスマスにさせまいというオレなりの優しさだ。これオレ自身にも刺さるけども。
ただ今年は、いつもとは違う――そう、野郎二人のむっさいクリスマスなんてそれこそ、うら寂しいというものだろう。
だからオレは――女装してやった。ハハハ女装してやったのだ! ざまあみろ! 何が?
これはこれで何かを失っている気がしないでもないし、我ながらテンションもおかしい。が、あいつとは無二の親友、ツーカーの仲、気の置けない間柄だ。
「おまえなにしてんだよ~(笑)」と笑ってくれる確信があるし、もしダダ滑りしたとしても笑い話で済ませてくれるだろう。
そう考えて、オレはマンション4階のあいつの部屋の扉を叩いた――
のが、数分前の話。
今、オレは、
「――――――」
「――――――」
完全に硬直していた。
見知らぬ美女と、向かい合った状態で。
しかしなぜ、無言で固まっているのか……ここで少し、状況説明というか、言い訳を挟ませていただきたい。
さてオレは今まさに女装しているワケである。あいつのマンションへ来るまでに、当たり前だが人目についた。さすがに初めは恥ずかしかったワケだが……。
これが案外、ウケが良かったのだ。
忌々しいコンプレックスの童顔だが、それゆえか、どうも誰にもバレていなかったらしい。どころか二、三回くらい、男から声をかけられたくらいだ。
だからオレは、変な自信をつけてしまった。
これはイケルんちゃうか、と。
ああオレは今、美少女なんだな、と。
……そうして、欲張り気味に詰め物をした胸を自信満々に張って、親友のマンションに辿り着いた。
そんなオレが膨れ上がった自尊心のままに、玄関を開けるや否や放ってしまった第一声が、コレだ。
『うぇ~い★ おい~親友~彼女もいないボッチさみしーおまえのために、わざわざきてやったぞー★ きゃははっ★(高音) なに~黙っちゃって~もしかして驚いてんの~? ざ~こざ~……ウオッ(魚じゃないけどここで気付いた)』
我ながら長い第一声だったな、と思う。気付くのも遅すぎた。
女装テーマは、メスガキ。あいつの好みを知るからこそのRPG。やかましいわ。
この日のために、声優志望の姪っ子さんから個人レッスンを受けたり、ボイスドラマやASMRを購入しまくり研究しまくった。
今のオレが発した声は、もはや自他共に認める、立派なメスガキヴォイスだったろう。
その成果が……この見知らぬ美女への暴言よ!!
こんなファーストコンタクト俗物すぎてガ〇ダムなら即・殺し合いが発生しちゃいますよ!? 無言なのがまだ温情ですわ!
それにしても、何でこんなクソ辺鄙な場所(親友の家)に、こんな美女がいるのか。
まさか、彼女ができた? いや有り得ない(失礼)、それだけは天地が逆転しようと世界が滅ぼうと有り得ない(度重なる失礼)、オレよりあいつのほうが先に彼女ができるとか有り得ないもん(臆病な自尊心)。
大体、オレはあいつに「今から遊び行くで」と連絡しているし、「ええで」と返されている。それなのに彼女を呼ぶことなどあるだろうか? いや、ない(反語)。
そもそもあいつとは大学もバイトも一緒だが、こんな美女、見たことがない。
こんな……こんな、黒髪ロングで圧倒的に清楚な、ちょっと背が高めでモデル体型の……。
メガネがクッソ似合うっ……知的美女なんてっ……!
本当に、何でこんな所に……ん? でもよく見れば、ちょっとあいつの面影があるような……ハッ!!?
……そうか、そういうことだったのか。オレは今、完全に気付いてしまった。
ハハッ、なんだ、気付いてしまえばなんてことない……そう、あいつは。
自分のお姉さんを、彼女のいないオレに紹介してくれるつもりだったのだ――
へへっ、サプライズのつもりかな。水臭いぜ、まったく……本当、まったく……。
……ごめ゛ーーーーーん゛っ親友ーーーーーっ!!!
おまえの……おまえのアシストを、オレっ!! 台無しにしちまったっ!!
豪快にオウンゴールっ!! 決めちまったッッッ!!!
そういえばオレ昔バレーボールで思い切り自分のコートにスパイクぶちかまして、
『バレーでオウンゴール決めたヤツ、初めて見たわ……』
って言われたな……背ぇ低いから、角度とか、こう……ゴメン……。
あと協力してくれた姪っ子にも、
『なんでそう変な方向にばっか努力の思い切りがいいのよ。彼女さがせ彼女を』
って正論ぶちかまされたな……。
結局のところ、オレは明後日の方向にかっ飛ばしてしまった努力のせいで、立派なメスガキヴォイスを親友のお姉さんにご披露してしまったワケだ。
あまりにも、あまりにも好みのタイプすぎて、ネタバラシしようにもできない。このお姉さんの印象を、少しでも損ないたくない。ていうかぶっちゃけ、お付き合い願いたい。
ハアハア……オレの正体がバレないよう、この場を切り抜けるために……。
オレは一体……どうすればいいんだ……!?
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