【短編】夢が卵が鶏か

オオオカ エピ

1話完結 夢?

十年くらい前だったと思う。

当時の私は、Web小説のサイトを見たことも無かった。

ちょこちょこと、後の処女作になる作品の、場面場面を、思いついてはメモアプリに書き留めていただけ。

そんな頃。


夢を見た。


私は一本、小説を書いていた。

非常に満足に書き上げた印象だった。


起きた瞬間、夢であったことが残念だった。

急速に薄れて行く内容の中、必死に思い留めた内容は、妙なものがなる木の話をしていた、ということだけ。


「傑作を書き上げたのに、内容全然覚えていないんだ」


起きてから、私はそんなことを口にした。

そして、いつしかそのエピソードも記憶の中に埋もれていった。


今年九月に、一年半余り断続的に更新していた、六十万文字の大作が完結した。

薄っぺらい私には、もう物語は書けないような気がしていた。


しかし、ひと月後。


急に頭の中に物語が降りてきた。

短編を一本書いてみた。


三日後。

その登場人物たちが動き出した。

書けると思った。


そして、一月程で十三万文字の長編になり、現在『カクヨムコン11』に投下している。


ラストから二話目を書いていた時、とあるキャラの台詞を書いた時だった。


かちり。


ピースがハマる音がした。


『◯◯がなる木』


「あっ……」


いつかの夢のシーンだと思った。


現在進行形で連載している作品が、私としてはやたらと早く書き上がったのは、夢の中で一度書いていたからなのだろうか。


それとも、あれは、現在の自分を夢でみた、当時の私の予知夢だったのだろうか。


あるいは、別の世界線の私が書いていたのだろうか。


夢とは、時に他の可能性の世界で生きる自分と繋がる場所だとも、私はこれまでの不思議な体験から考えている。


はたまた、たまたま同じ様なシーンだったため、記憶が上書きされて、そのように思っただけなのか。


どちらが卵でどちらが鶏なのか。


きっと答えは出ない。



ー了ー


※現在進行系の拙作が傑作かどうかは読んで判断してください(笑)

※この話は部分的にノンフィクションで、フィクションです。

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