小杉なんぎんの短編小説【吸い殻の闘い】

小杉なんぎん

第1話

くわえ煙草をしながら信号待ちをしていたら、トングで道の吸い殻を拾い集めているおじさんと目が合った。気まずい。携帯灰皿など持っていない私。そのおじさんの目の前でポイ捨てをする勇気はとてもない。どうしようと迷っていたら、おじさんの方も気まずさを感じたのか、わざとらしく目をそらし後ろを向いた。今だ!その瞬間私は、熱さを我慢し手で煙草の火をもみ消し、吸い殻をジャンパーのポケットに入れた。こちらをふり向いたおじさんが、煙草を持っていない私を不思議そうに見る。私の足元に吸い殻が落ちていないかを確認する。どうやら私の勝ちのようだ。おじさんは、どこかに吸い殻が落ちていないかと、いつまでも探し続けている。

                了

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