第10話 平和の束の間・新たな招待状編
地方都市ルンフェルドでの一連の騒動がひと段落したある朝、リードは久しぶりに畑でのんびりと土を耕していた。太陽の光を浴び、鳥のさえずりを聞きながら、心からの安らぎを感じる瞬間だ。
「ふう……やっぱり、これだよな」
ミリィが手を拭いながら笑う。
「リードさん、本当に幸せそうですね……でも、きっと長くは続かないんですよね」
その時、空から一通の招待状が舞い降りた。封筒は厚紙で、王国の紋章が金箔で押されている。リードは眉をひそめながら受け取る。
「……国からか。しかもまた、召集の匂いがするな」
招待状の内容は明確だった。王都で開かれる「王国大使館合同晩餐会」に、特別ゲストとして招かれるというのだ。平民でありながら、その膨大な魔力を理由に、王国側はどうしてもリードを放っておけないらしい。
「……まあ、これは断れないな」
リードは肩をすくめ、ミリィとともに準備を始める。普段着のままでは場違いすぎるため、街の仕立て屋で簡単に衣装を整えることに。
「リードさん、あの……晩餐会って、戦闘訓練や冒険じゃないですよね?」
「いや、今回はコメディ要素もある宴会らしい……ただ、国の人間に囲まれるだけで、俺にとってはもう戦場みたいなもんだ」
晩餐会の会場に到着すると、煌びやかな照明と豪華な食事、そして厳格そうな大臣や貴族たちが並ぶ。リードは場の空気に少し圧倒されながらも、心の中で小さくつぶやく。
「……やっぱり、畑に戻りたいな」
しかし、招待状の裏には小さな文字で追記があった。
『本晩餐会では、リード様の特別な“魔力のデモンストレーション”がございます』
リードは肩をすくめる。
「……やっぱり、こうなるよな」
会場の中心で、リードは軽く魔力を使った演出を披露する。炎や光、微小な浮遊魔法で食卓に華やかさを添えると、貴族たちは拍手喝采。しかし、その華やかさはまさにコメディ的で、会場の一角で転んだ給仕が魔力の光にびっくりして飛び上がる様子は、リードも思わず吹き出してしまう。
「……やれやれ、平和な日常は束の間だな」
ミリィが小声で耳打ちする。
「でも、リードさん、こうして楽しめる瞬間もありますよ」
リードは目を細め、わずかに笑む。
「……そうだな。まあ、今日はこれで勘弁してやるか」
こうして、リードの一時的な平穏は確保された。しかし、外の世界では、次なる騒動が着々と動き始めていた。スローライフはまだ遠く、だがリードは今日も笑顔を絶やさず、その日その日を生きるのだった。
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