第6話 レアスキル

俺(リスク)とシスターマリアは、勇者アルベルトと共にネズミ盗賊団のアジトの洞窟を突き進んでいると、モンスターとの戦闘後にシスターマリアがレベルアップした。


シスターマリアの体にじんわりとした温もりが広がる。


《シスターマリアのレベルが上がった!》

《体力が2上がった!》

《魔力が2上がった!》

《素早さが1上がった!》

《賢さが3上がった!》

《新しい魔法「S(エス)ペート」を覚えた!》


目の前に浮かび上がる文字に俺は驚いた。するとシスターマリアが杖を掲げて呟く。


「聖なる光が私を記す、ステータス!」


杖の先から聖なる魔法が発動し、シスターマリアの体が光に包まれる。すると、目の前に彼女のステータスが浮かび上がった。


―――――――――

名前:シスターマリア

レベル:3

体力:18

攻撃:3

防御:6

素早さ:8

魔力:10

賢さ:9

運:5

この世界で教会で働いていたシスター、リスクがあまりに弱いので旅についていく。

―――――――――


「へぇ、こうやって自分の能力が見られるんだな。」


俺は感心しながら画面を眺める。


シスターマリアは魔法の詳細を確認してから顔を上げた。


「リスクさん、どうやらこの魔法は味方の素早さを上げられるみたいです。」


「えっ、そうなの? じゃあ俺にも試してみてよ!」


「わかりました。聖なる風よ、リスクに俊足を S(エス)ペート!」


俺の足元に緑色の小さな竜巻が発生し、身体が一気に軽くなった。


「すげぇ! なんか体がめちゃくちゃ速く動きそうな感じがする!」


「これで弱いリスクさんもモンスターから逃げやすくなりますね。」


シスターマリアは微笑みながら言ったが、俺の小さな男のプライドが砕けた。


「だよねー。戦わずに逃げることも大事だよね……」


「では、リスクさんの素早さがどれくらい上がったのか見てみましょう。」


「聖なる光がリスク記す、ステータス!」


杖から光が放たれ、俺の体を包み込む。そして目の前に俺のステータスが浮かび上がった。


―――――――――

名前:リスク

レベル:2

体力:15

攻撃:0

防御:0

素早さ:0+22(Sペート効果中)

魔力:0

賢さ:8

運:10

この世界で、最も弱いスライムに負けた男。

―――――――――


俺は絶望した。0が並ぶこのステータス、戦闘に向いているとはとても思えない。


「リスクさん、素早さが+22になっていますよ! 10秒間は『S(エス)ペート』の魔法でモンスターから逃げやすくなります!」


「ありがとう……シスターマリア……俺の能力が絶望的だってことがよくわかったよ……」


その時、シスターマリアが目を丸くして声を上げた。


「あれ?! リスクさん、固有スキルがついてますよ!」


「えっ? 固有スキルって何?」


「これは、生まれながらに持っている宿命のスキルです。レアスキルとも言われますね。」


「……俺にもそんなスキルが?」


「はい! ええと、スキル名は……『ゼロの能力者』?」


「ゼロの能力者? 何それ、強いの?」


すると、後ろで会話を聞いていた勇者アルベルトが口を挟んだ。


「ゼロの能力者……聞いたことがないな。でも、レアスキルなんだろ?だったら何かすごい力を秘めてるかもしれないぞ!」


「でも俺、攻撃も防御も0だし……本当に意味あるのかな……。」


「大丈夫さ、リスク!武器屋で強い武器や防具を買えば、戦えるようになる!」


アルベルトは俺の肩を叩き、励ましてくれた。だが、シスターマリアは眉をひそめながらスキルの詳細を確認し続ける。


「……リスクさん、このスキルには特徴があります。レベルアップしても攻撃、防御、素早さが上がらないスキルのようです。」


「……え?」


「ただし、ここの部分が読めなくなっています。たぶん、何か条件を満たすと解放されるスキルなんじゃないかと……。」


俺は自分がレベルアップしても賢さと運しか上がらない理由を知り、ショックをうけた。


「そりゃないだろ……。こんなんじゃ、永遠に、まともに戦えないじゃん……。」


アルベルトは俺の背中を叩きながら笑った。


「まぁまぁ、そう落ち込むなよ!スキルにはきっと使い道があるはずさ。俺だって最初は剣を握るのも下手だったんだぜ?大事なのは、どう活かすかってことさ!」


「アルベルト……ありがとう……。」


まだ俺には、このスキルの本当の価値がわかっていなかった。

しかし、この『ゼロの能力者』が、やがて世界を救えるほどの力を持っていることを俺はまだ知らない。

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