第3話 物資補給

最初の町に到着すると、俺は勇者アルベルトから欲しいものリストとお金を渡された。アルベルトはレベル上げのために戦闘に出かける間、俺は道具屋や武器屋で物資補給と情報収集をすることになった。


シスターマリアが町に来ていたので、俺は思い切って話しかける。


「どうしてこの町にいるの?」


彼女は少し恥ずかしそうに視線を下げながら答えた。


「リスクさんがスライムに倒されたと聞いて....私が助けなきゃって思ったんです」


身も蓋もない理由だった。つまり俺が弱すぎるから、見捨てられずについてきたというわけか。ため息をつきたくなるが、弱い俺が悪いんだ....男として恥ずかしいが、まあ気にしないでおこう。


<i947587|4583>


シスターマリアは聖なる魔法が使える白魔導士であり、回復や補助魔法に加えて、少しだけ攻撃魔法も使える。その力は確かに頼もしい。


さて、俺はさっそく道具屋に向かい、薬草と毒消し草を購入しようとした。


「いらっしゃい! 今日は何を探してるんだい?」


店主が陽気な声で迎えてくれる。


「薬草と毒消し草を頼むよ。できれば、その....安くしてくださいよ」


俺はすかさず商人スキル【値引き交渉】を試みる。


「そう言われてもねぇ……」


店主は苦笑いしながら首を振る。ここで俺は次の商人テクニックを発動する。


「まあ、しょうがないな。他の店を見てから決めるよ」


そう言って、一度立ち去る素振りを見せる。すると、案の定、店主が引き止めてきた。


「待ちな! 5個まとめて買うなら10%引いてやるよ!」


しめた、買うと見せかけて店を出る【偽交渉テクニック】だ。


俺の交渉術の勝利だ。


「助かるよ、おじさん!」


俺が満足げに薬草と毒消し草を受け取ると、シスターマリアが目を輝かせて俺を見つめていた。


「すごいです、リスクさん! 押してダメなら引いてみる、ですね!」


「まあ、俺は商人向けのスキルしかないからな……」


俺は苦笑しながら道具を鞄にしまった。


次に向かったのは酒場だ。ここでは町の情報を集めることができる。


「ねえ、大ネズミの頭領グリードって知ってる?」


俺が酒場のマスターに尋ねると、彼は眉をひそめた。


「あいつか……最近、この辺りの交易路を荒らしてる盗賊団のボスだな。大ネズミのような風貌だから、ネズミ盗賊団って呼ばれてる。手下も多いし厄介な連中だぞ」


「何か弱点は?」


「火だな。奴らは火が大の苦手だ。松明(たいまつ)を持ってるだけで、戦わずに逃げ出すこともあるって話だ」


なるほど、火に弱いなら松明は必須だな。


俺は先ほど道具屋に戻り、松明を買うことにした。【常連客テクニック】を発動させる。


「おじさん、松明をいくつか頼むよ。できれば安くしてくださいよ」


「また値引きかい? しょうがないねぇ……3本買うなら1本オマケしてやるよ!」


こうして、松明を手に入れた俺は宿屋に戻り、アルベルトのための部屋を確保して、その日の業務を終えたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る