荒れる界隈
『ヨミカキ!』運営によれば、応募総数が1万を超えるとなると審査に多大な人的負担が発生することから、一次審査において誤字脱字や日本語校正において基準点を設定し、文章解析出力に特化した国内産生成AI『もじ磨呂chat ver.Ⅱ』を使用して基準をクリアした作品を "中間選考突破作”とするのだという。
さらに最終審査には特別枠としてAIが受賞作を選ぶという『AI選出賞』も設定された。
運営側としては“AIによる同一基準の公平な審査”としているが、一部ユーザーからこれに反対する意見が噴出したのである。
不満をあらわにしたのは主に書き手ユーザーたちだった。
「AIは不完全なものだから審査の確実性が保たれるか疑問」
「創作物への一律の数値評価が適切といえるのかわからない」
といった冷静な指摘もあれば、
「AIに判定を委ねるなんてけしからん!」
「AIに良い文章のなにがわかるんだ!」
といった感情的な意見も少なくなかった。
SNSには「# 読み書きにAIはいらない」 というハッシュタグが拡散され、生成AIと比較して自分がいかに文章を生み出すため努力をしてきたかといった創作への熱意や美学を語る作家も現れた。
その反面、
「運営も応募作全部を読んでいられないでしょ」「AIにやらせたほうがタイパもコスパもいい」
といった運営擁護派も少なくはなかった。
「ついに業界が創作へのAI参入を公式に認めた」
「これはまさに人間がAIに敗北した瞬間w」
といった冷笑系コメントも飛び交った。
クリエイティブ業界における生成AI使用の範囲やその是非については、議論が尽きない話題であるが、『ヨミカキ!』は中立の立場をとっていた。
しかし今回のコンテスト応募にあたっては該当作品に『AI本文(一部)利用』ないし『AI補助利用』のタグをつけるようユーザーに推奨しており、運営側として執筆活動におけるAI利用を容認しているかのように一部ユーザーには捉えられていた。
そのうち「そもそも今どきAIで誤字脱字チェックすらしてない作者ってどうなの?」「AIを創作に使うやつは本物の作家とは言えない」といった個人の価値観による作家同士の貶し合いがあちこちで起こり、ついには「AIは本当に読んでいる、書いているといえるのか?」といった概念的な議論も火種となって、ヨミカキ内だけでなく創作界隈は荒れに荒れたのである。
騒動はこれだけにとどまらなかった。
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