女子高生が卵料理について話したら

石動なつめ

1


「ゆで卵と目玉焼きと卵焼きを一緒に食べたい時あるじゃん?」


「急にどうした。ってか卵フェスじゃん。美味しそうだけど」


「だろ? あたし、毎日それなんだけど」


「どんだけ卵好きなんだよ。さすがに食べ過ぎっしょ。美味しいけどさー」


「だって好きなんだもん。でさー、最近そこに煮卵と卵サンドとOTSUKIMIバーガーが追加されてさー」


「似て非なるメニューじゃん」


「ユキ、難しい言葉知ってんね! そうそう、そこなんだよ! それでさぁ、もう一つ浮かんだんだけど、これがちょっと悩んでてさ」


「なーに?」


「カルボナーラってそこに入ると思う?」


「入るんじゃない? 卵が入ってないカルボはクリームパスタっしょ。クリパ。ってかさ、クリパって言うとクリスマスパーティーみたいだよね」


「分かるー! ってわけでさ、今から卵フェスしよーぜ! ファミレス! クリスマス限定で、パスタメニューが全部ちょっとだけ安くなってんの! クリパでカルボ!」


「いいねぇー! あたしボンゴレ食べたい!」


「カルボは!?」


 ふわふわもこもこの上着を着た女子高生たちが、そんな話をしながら歩いている。

 友人同士の何気ない、賑やかな会話。

 しかしその朗らかな声は、彼女たちだけに留まらず、すれ違った人たちの耳にしっかりと残っていた。


(今晩、ベーコンエッグしよ……)


(コンビニでおでん買って帰ろうかしら)


(卵かけご飯もいいよなぁ~)


(卵焼き食べたい、ちょー甘い奴)


(OTSUKIMIバーガーのシーズン終わってるよなぁ。自分で作るか)


(カルボって何か似た名前のお菓子なかったっけ……)


(茶碗蒸しもいいぞ、若者よ……)


 人々の頭の中に、思い思いの卵料理が浮かぶ。

 女子高生たちが歩く道では、ちょっとした卵料理フィーバーが起きていた。

 けれども彼女たちはそんなことなど露知らず。


「卵入りのポテトサラダが付け合わせにあるハンバーグって、卵料理だと思う?」


「それは卵料理じゃなくてハンバーグだよ」


 相変わらず賑やかに、そして楽しそうに話をしながら、ファミレスへと入って行ったのだった。

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