【お題フェス11卵】卵運びはもうイヤだ!?~とある冒険者《ハンター》たちの運搬苦労話~

八木崎

卵運びは一苦労……?



「どうする?」


「どうするも何も……」


「そうだな……」


 冒険者ハンターギルド。一獲千金を夢見て、果てしない冒険の日々に身を投じる者が集う場所。

 そして施設内のクエスト掲示板前にて、依頼書を見つめながら唸り声を上げる3人の人物。

 槍使いのランサー。弓使いのアーチャー。そして狩猟笛を持ったシンガーの3人である。


 彼らは中堅クラスの冒険者ハンターである。

 それなりの場数も踏んできて、ありとあらゆるモンスターを狩ってきた。

 だが、そんな勇士であっても、気が引けるクエストがある。

 それが今、彼らが見ている依頼書の内容だった。


『竜の卵運搬 納品:竜の卵1個 報酬5,000G』


 ラ「竜の卵1個で5,000G……かなり良い条件だが……」


 ランサーが顎に手を当て、考えるようなポーズを取る。


 ア「……いや、無理だ。相手はドラゴン。そう簡単にはいくまい」


 首を横に振りながら、冷静にそう判断をするアーチャー。


 シ「そうは言っても、このクエストを達成しないと、次のランクに昇級できないんだろ?」


 2人に訴えかけるように、シンガーが前に出てそう告げる。

 彼らには目標があった。次のランクに進み、もっと高額なクエストを受けられるようになること。

 その為には、今回のクエストは絶対にクリアしておきたかった。


 ラ「……仕方ない、やるか」


 ア「あぁ。私も覚悟しよう」


 ランサーが槍を肩に担ぎながらそう言うと、アーチャーが覚悟を決めたように頷いた。


 シ「よし! そうと決まれば、すぐに準備だ!」


 シンガーの号令の下、3人は早速準備を整えると、街の外に繰り出した。

 街から遠く離れたの草原地帯。そこに目的である竜の巣がある。


 ラ「さて、どうする? どんな手で行く?」


 巣に向かう途中で、ランサーが2人に問いかける。


 ア「出来るだけスマートに事を済ませたい。何分なにぶん、回復薬などの在庫が心もとないからな」


 アーチャーが自身の持ち物を確認しつつ、そう告げる。


 シ「じゃあ、こうしよう。俺とアーチャーでドラゴンを引き付ける。その間にランサーが卵を掠め取っていく。そして卵を納品して終わりって感じだ」


 ラ「討伐はしねえのか?」


 シ「時間が掛かるからパス。とにかく、最速でクリアするぞ!」


 そう高らかに宣言した後、3人は支給品である携帯食料を食べ、スタミナをつけてからフィールドを駆けていく。

 途中、高級な素材が取れる茂みや、鉱石の掘れる岩の隙間などあるが、それら全部を無視して突き進む。


 そして草原地帯にある山の中腹に辿り着くと、目的とするドラゴンの巣を発見することが出来た。

 幸いにして、巣にはドラゴンの姿は無い。木で造られた大きな巣の中には、数個の卵が置かれているだけである。



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