路上占い、あれこれ156【占い師は現実と戦う】

崔 梨遙(再)

モーニング 2757文字 です。

 僕が夜のミナミで路上占いをしていた時。立花さんという金持ち&デブ&ハゲの50代後半の常連客がいました。立花さんは処女狂いで、常に処女を探し求めていました。そして、中学3年生の非処女、中学1年生の処女を連れて来て惨敗し、今度はなんと小学6年生を連れてきたのですが、その子は『私は処女じゃない』と言い出しました。僕は気を失いそうでした。



『立花さん、この子、処女じゃないらしいので帰してあげてください』

『私、まだ帰らへんで。まだ親が起きてる時間やもん。今、帰ったら親に殴られるから』

『DVの家庭なの?』

『うん。私、脱いだら痣だらけやで』

『君、名前は?』

『杏奈』

『杏奈ちゃん、今から僕とこのオッサンは大事な話をするから、杏奈ちゃんはそこのカフェでパフェでも食べてきなさい』

『あ、千円くれるの? ありがとう。ほな、パフェでも食べてくるわ』

『崔さん、また怒ってるんか? なんで怒ってるねん?』

『犯罪だからですよ! 小6とHするのも売春も犯罪ですよ、僕は立花さんに捕まってほしくないから言ってるんです』

『崔さん、神経質過ぎるで。もし俺があの子とHしても、俺やあの子がHしたという証拠は無いやないか。大丈夫や』

『じゃあ、もし悪い子に引っかかったらどうするんですか?』

『悪い子に引っかかったらどうなるねん?』

『Hした後で、「このことを警察に言われたくなかったら金を出せ」って、ずっと脅されることもありえるんですよ』

『Hした証拠は無いやんけ』

『日本の警察は優秀ですよ』

『わからんなぁ、とりあえず、俺はあの子とHするで』

『Hするって宣言しないでくださいよ』

『でも、処女じゃないならあんまり高い金は出されへんなぁ』

『なんで小6を抱く前提なんですか?』

『俺はいつでもやる気満々やで』

『立花さん、戦国時代にタイムスリップしてください』

『え? 何を言うてるんや、崔さん』

『あの時代なら13歳の花嫁とかもありだったようです』

『ほお、それはええなぁ』

『想像してください。戦国時代であの杏奈ちゃんと出会うんです』

『おう、想像してみたで』

『愛し合って結婚するんです』

『結婚するなら処女がええけどなぁ』

『でも、戦国時代ですから戦が起きるんです』

『ほう、ほう、それで?』

『立花さんは流れ矢が刺さって死ぬんです』

『なんやねん、それ!?』

『立花さん、1回死にましょう。そして、正常に生まれ変わってください』

『死なへんわ! なんで死ななアカンねん? 俺は正常や!』

『ただいま』

『杏奈ちゃん、戻って来るの早いで』

『オッサン、食事に行くなら早く行こうや、1万円くれるんやろ?』

『おお、そうやな。ほな、行こか』

『うわぁ、マジで行くの? アカンで杏奈ちゃん』

『大丈夫やで、崔さん。食事だけやから。私、そんなアホちゃうで』

『いやいや、その後のことは交渉次第やろ』

『ああ! 行くんですかぁ・・・・・・?』



『崔さん』

『あ、杏奈ちゃん』

『食事だけで帰って来たで』

『立花さんは?』

『私がホテルに行かなかったから落ち込んで座ったままやわ』

『ホテルに行かなくて善かったわまだ帰らへんのか?』

『ううん、もう帰る。家にいるのが嫌やからまた来るわ』

『気をつけて帰りや』

『うん!』


『崔さん・・・アカンかったわ』

『それで良かったんですよ』

『でもなぁ・・・』

『女子大生を狙ってください。ほら、あの地味な女の子達とか』

『地味やなぁ』

『でも、美人ですよ。ナチュラルメイクだから美人だとスグにわかります』

『ほんで、あの子達がどうしたんや?』

『誘うんですよ・・・ちょっと、そこのお姉さん達! 占いはいかがですか? 今日は特別に無料にしておきますよ』

『うん、無料なら占ってほしい』

『じゃあ、こっちに来てください。さあ、さあ、座って、座って』

『うわ、私占い師さんに占ってもらうの初めて』

『私も』

『何を占いましょう?』

『やっぱり恋愛です、彼氏がいないから』

『ちなみにお名前は?』

『あ、千夏です。女子大生です』

『わかりました、背の高いグラマーな美女の方が千夏さんですね、占います・・・あ、ちょうど良い運気に変わったところです。火と火が合わさり炎となる! 燃えるような恋愛が期待できそうです。お相手は既に出逢っているかもしれませんし、これから出逢うのかもしれません。半年は強運です。いつお相手が現れてもおかしくありません、せっかくの良い運気ですから有効に時間を使いましょう』

『やった! 燃えるような恋愛かぁ・・・』

『じゃあ、私も恋愛で』

『お名前は?』

『千春です』

『小柄なグラマー美人の方が千春さんね。では、占います・・・うーん、よくないですね。女性に不利、男性に有利な卦が出ました。女性にこの卦が出ると、好きな人がいてもライバルがいます』

『千春、当たってるやんか! きっと高橋君のことやで』

『思い当たるところがあるんですか?』

『千春には好きな人がいるんですけど、その人には彼女がいるんです』

『可能でしたら、その人を想うのは辞めて他に好きな男性が出来ればいいのですが・・・・・・』

『とにかく当たったね。千春、他の人を好きになろうよ』

『うん・・・・・・』

『ところで、これから食事をご馳走させていただけませんか?』

『え!? 占い師がナンパするんですか?』

『相手によります。いかがですか?』

『いいですよ、飲みに行くくらい。もう終電も無いし、朝までカラオケに行こうかと思っていたところなんです』

『よし、行きましょう!』

『俺も行くぞ!』

『占い師さん、こちらは?』

『お客様です。こちらのオジサマも同席させてください。ちなみに僕は崔です』

『はあ・・・まあ・・・いいですけど』



『え!? 千春ちゃん、処女なの?』

『はい』

『私は処女じゃないけどね』

『おお、処女か-!』


 処女と聞いて立花さんは千春に集中攻撃を始めました。と言っても、『やらせてくれ』、『お金は払う』という言葉を繰り返すだけでした。そして、僕も千春の処女には興味を抱きました。だって、千春はカワイイから。どうせなら、僕が千春の処女を奪いたいと思いました。


 ところが、僕には千夏がべったりくっついてくるのです。千夏も美人なのですが、千春の処女を僕が奪いたい・・・でも・・・くっついてくる千夏を振り払うことは出来ません。


 朝方、僕等は解散しました。僕と千夏は連絡先を交換しました。千春も、立花さんに聞かれてシブシブ連絡先を交換していたようでした。勿論、千春は立花さんの誘いには乗りませんでした。



『崔さん、千春ちゃん、ええなぁ』

『そうでしょう? 最初から女子大生を狙えば良かったんですよ』

『そうやなぁ、俺、しばらく千春ちゃんにアタックしてみるわ』

『そうそう、女子大生なら罪になりませんから』



 良かった、良かった。良くないのは、それから僕が千夏からメールと電話で集中攻撃をされるようになったことです。




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路上占い、あれこれ156【占い師は現実と戦う】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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