アフター・ザ・クリスマス
ちびまるフォイ
ストーキングにかける情熱の正体
「ホーホーホウ。今年もたくさんプレゼント配ったぞ」
クリスマスのひと仕事を終えたサンタは家についた。
すると家の前に誰かが立っている。
「やっと見つけた……サンタ……」
その顔を見るなりサンタはトナカイの手綱を引いて空に舞い上がる。
背中に悪寒が走る。けして寒さのせいではない。
「やばいやばいやばい!!! ホウ!」
慌てるサンタに、プレゼント袋が話しかけた。
「どうしたんですかサンタさん」
「家の前にやばいやつがいたんだよ!!」
「さっきの人ですか? 何がヤバいんです?」
「プレゼント強盗の危険があるから住所は秘密。
にもかかわらず、ピンポイントで家を特定したうえ
わしの帰宅時間すら把握していることがやばいんだ!」
「え? でもサンタの家って大々的に公開してません?」
「あれはダミーなんだよ! ホウ!」
「サンタさん、なにか空から追いかけてきてます」
サンタはソリから振り返る。
視界の悪い雪の空であっても、機械的な光が見える。
「ど、ドローン!? あいつ追跡してきてる!?」
空を縦横無尽に走るトナカイとソリに対し
ぴたり後ろに取り付いてどこまでも追ってくる。
ドローン内臓のスピーカーからは
『そこのサンタさん……待ってください』と怖い音声すら聞こえる。
「ええい、こうなったら!!」
トナカイを自動運転モードに切り替え、サンタは振り返る。
懐からサンタ特性"透明粉末"をまいた。
風に乗って粉をあびたソリたちは一瞬で透明。
光学センサーも熱探知、はては音すら消してしまった。
(これで追ってくれまい。ああびっくりした)
こういうこともあろうかと、世界中に配置していた隠れ家のひとつに身を隠した。
もちろん住所は誰にも教えていない。
隠れ家の暖炉で温まりながら、一息ついた。
「一体何だったんだ……」
「サンタさんのファンでは?」
「毎年、サンタを探そうとする人は一定数いるが
あそこまでしつこくてヤバいのは始めてだ」
「サンタさん、誰か来たみたいです」
「え? そんなはずは……」
サンタが恐る恐るドアの前にたって、のぞき穴から外をうかがう。
誰もいない。
その代わり、後ろから声が聞こえた。
「サンタさん。ここに隠れていたんですね」
「うああああ! なんで家に!!!」
「煙突から入ってきました」
「暖炉に火くべてたけども!?」
全身を真っ黒のすすだらけにしながらも
ストーカーの目はらんらんと輝いているのがめっちゃ怖い。
「どうしてここがわかった!? 姿も消していたし
この家もステルス加工されているし住所も非公開のはず!」
「トナカイですよ……」
「はあ?」
「トナカイのふんをDNA解析して、その痕跡を追ってきたんです」
「なにこいつめっちゃ怖い!!!」
「さあ、サンタさん……」
なにか背中から取り出すしぐさ。
刺される、と思ったサンタは緊急用の煙玉をはなった。
あたり一面白い煙につつまれて何も見えなくなる。
透明粉末を使って姿を消してから空に舞い上がる。
今度はトナカイの蹄の後から、糞の痕跡も残さないようにする。
もう空が明るくなって寒くないはずなのに、
口からはガチガチと味わったことのない恐怖が体を冷やす。
「なななな、なんなんだよあいつは!? なにがしたいんだ!」
「ここまで追ってくるなんて……」
「なんかもうファンとかそういうレベルじゃない。
ガチでヤバい人だ! 絶対ころされる!!」
「サンタさん、足元を見てください!」
雲が晴れて地上が見えたとき、大量の人が空にむけてスマホを向けていた。
「あれは何をやってるんだ……?」
現代文明にうといサンタにはわからなかったが、
プレゼントで現代のはやりを熟知している袋には察しがつく。
「サンタさんを撮ってるんですよ!」
「透明なのに?」
「カメラがこっち追ってます。透明粉末もアプリで突破されたようです!」
「あのストーカーのしわざか!?」
「もう逃げられないですよ、サンタさん!
あのストーカーが一般人を味方にして、
人間監視カメラのごとくサンタを追いかけてるんです!」
「なんて凶悪な人海戦術を!!」
どれだけ高度をあげても地上に降りる瞬間は必ず出てくる。
そうなると地上に待機しているカメラ小僧どもがサンタを特定。
その位置をすぐさまストーカーへ送信するだろう。
いくら逃げても逃げられないと悟った。
「サンタさん……」
「なんだ袋よ」
「もう逃げられません。いっそストーカーと腹を割って話しませんか?」
「そんなことしてみろ。間違いなく滅多刺しにされるぞ」
「なんで殺される前提なんですか」
「だってなんか取り出してたんだもん」
「ファンレターかもしれないじゃないですか」
「うーーん……。でもここまで徹底した追跡するか?」
「それだけの情熱なのでは?」
「ホウ……そうなのかなぁ……」
「これ以上逃げるのは無理です。相手の事情を理解できれば、
追いかけてこなくなるかもしれませんよ?」
「そうか……。話すしか、ないのかなぁ……」
サンタはソリのスピードをゆるめ、また別の隠れ家へと到着した。
もちろんストーカーには居場所がバレているだろう。
案の定、サンタが隠れ家に到着した数分後にドアがノックされる。
「やっぱりか……」
誰がいるかは見なくともわかる。
刺されても大丈夫なようにお腹へ脂肪と雑誌をつめておく。
「どなたですか」
「サンタさん……見つけました」
やっぱりストーカーだった。
覚悟を決めてドアを開ける。
「サンタさん……ああ、やっと……」
「待ちたまえ。君がどこまでも追いかける情熱はよくわかった。
だが一体何が目的なんだ。それを教えてほしい。
そしてもう二度と追いかけないでほしい」
「……」
「さあ、教えてくれ。いったいどうしてここまで追いかけるんだ」
サンタの質問へ答える前に、ストーカーは背中からなにか取り出す。
思わずサンタはお腹に力を入れて腹筋の壁をつくる。
しかし刃物ではなかった。
「不法侵入および、たび重なる不法入国の罪で逮捕します」
冷たい手錠がサンタの手首にかけられた。
アフター・ザ・クリスマス ちびまるフォイ @firestorage
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