第5話 不条理への「焼き」入れ

 騎士団長をワンパンで沈めた噂は、瞬く間に王都を駆け巡った。 「異界の覇王」「黒き衣の死神」……勝手に尾ひれがついて回るが、俺にはどうでもいい。 俺が欲しいのは豪華な食事でも名誉でもなく、ただ「自分を曲げずに済む場所」だけだ。


 だが、この世界は俺を放っておいてはくれなかった。


「赤城様! お願いです、お力をお貸しください!」


 数日後、セラフィナが血相を変えて俺の宿に飛び込んできた。 聞けば、王国の北を守る「絶壁の砦」に、数百年に一度の災厄——**『災龍(さいりゅう)アポカリプス』**が襲来したという。


「騎士団も、魔法師団も壊滅状態です……。このままでは、王国が……民が焼き尽くされてしまいます!」


「……おいおい、俺はボランティアじゃねぇんだぞ」


 俺は窓の外を眺め、鼻を鳴らす。 国が滅ぼうが、知ったことか。俺はただのヤンキーだ。正義の味方なんてガラじゃねぇ。


 だが、セラフィナは震える拳を握りしめ、涙を流しながら叫んだ。


「貴方は、あの時、猫を助けるために命を落としたのでしょう!? その優しい魂は、嘘なのですか!?」


「…………」


 痛いところを突きやがる。 俺は頭をガリガリと掻き、大きく溜息を吐いた。


「勘違いすんじゃねぇよ。俺は優しいんじゃねぇ。……ただ、デカいツラして弱者をいたぶる『不条理』が嫌いなだけだ」


 俺は特攻服の襟を立て、入り口へと歩き出す。


「そのトカゲ……どこの組のもんだか知らねぇが、挨拶なしに暴れてんなら、きっちり『教育』してやる必要があるな」


「赤城様……!」


「案内しろ。——イセカイの災厄だか何だか知らねぇが、俺の拳(ルール)を叩き込んでやる」

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