修学旅行で墜落した先は、能力至上主義の無人島でした
ユニ
第1話 日常とカーストの象徴
高度一万メートルを飛ぶ旅客機の機内は、修学旅行の浮かれた空気で満ちていた。しかし、時任守(ときとう・まもる)にとってそこは、地上と変わらぬ地獄だった。
「おい、充電が切れるだろうが。しっかり掲げてろよ、人間モバイルバッテリー」
カーストの頂点に君臨する五味(ごみ)が、守の顔の横でスマホを振る。守は無言で、自分のモバイルバッテリーを繋いだスマホを高く掲げ続けた。腕の筋肉が悲鳴を上げているが、拒否権などない。周囲の生徒たちは、その光景を娯楽番組でも見るかのように笑って眺めている。
「……時任くん、無理しないで」
通路を挟んで隣の席の長谷部瑠璃(はせべ・るり)が、心配そうに声をかけてくれた。クラスのアイドルである彼女の優しさは、今の守には痛い。彼女が自分を庇えば、次はいじめの矛先が彼女に向かうからだ。
「大丈夫だよ、長谷部さん。慣れてるから」
守が力なく微笑んだその時、五味が守の胸元から覗く古い金時計を奪い取った。
「なんだこれ、古くせぇ。お前には似合わねぇよ」
「あ……返せ、それは祖父の……!」
守が手を伸ばすより早く、五味は時計を床に叩きつけた。パリン、と風防が割れる硬質な音が響く。
その瞬間だった。視界が真っ白な光に包まれ、脳内に無機質な声が響き渡った。
『世界を再構築します。適性値を測定中……個体名:時任守に、固有スキル【聖者の全能譲渡(マスター・オブ・ギフト)】を付与します』
凄まじい衝撃。旅客機が、意志を失った巨鳥のように急降下を始めた。
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