年に一度の今日は、特別なひとときを過ごせますように。

花乃 牡丹

第1話

 聖夜、銀世界の中に、やや高めの歌声が優しく響きはじめた。

 それは、聞き覚えのあるうたを口ずさんでいる。 

 ひとつひとつ紡ぎ出されるメロディーは、粉雪に紛れながら空気に溶け込み消えてゆくような、幻想的な風景を連想させる。

 次第に先程とは違う声も聞こえてきた。その声は、先程とは打って変わって、とても透き通ったハリのある声だ。

 そして、二つの声が混ざり合い、幻想的なハーモニーとなっていた。


 徐々にスポットライトが明るく灯りはじめ、二人の姿が明らかになってゆく。

 そこには、手を繋ぎながら仲睦まじくデュエットする、クリスマスらしい衣装に身を包んだ男女の姿が浮かび上がる。


「Merry Christmas」


 二人が同時にそう呟く。すると、二人の背後からピアノの音色が響きはじめた。

 その旋律は、どこか聞き覚えのあるメロディを紡ぐ。

 するとそれに続いて鈴の音色が、さらにはベースラインやドラムも重なり、スポットライトに照らされバンドマンたちの姿が浮かび上がる。

 

 先ほどまでの静かな曲調とはうって変わって、とても賑やかなムードへと変化した。

 そして、二人はそれに合わせて先ほどよりもハイテンポに唄を口ずさむ。


 ────曲は終盤にさしかかり、再びスローなメロディへと変化する。

 そして二人が少し視線を上に向け、客席に向け息を揃えて言った。


「Happy Holidays!」


 客席からは盛大な拍手が沸き起こり、楽しいクリスマスを過ごしつつ来年も良い年になるよう、皆心から祈るのであった。

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年に一度の今日は、特別なひとときを過ごせますように。 花乃 牡丹 @jazzpiano06

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