【BL】悪役令嬢ものの断罪予定の第二王子に転生して卵の為に物語前倒しにしたけど、これは強制力というやつ…?
椎葉たき
第1話 第二王子、前世を思い出す
――卵サンド食べたいな……。
国営貴族学校の食堂で朝食のスクランブルエッグをフォークでつつきながら、ふと思った。
スクランブルエッグとは言い難く、カチカチに焼かれたそれは炒り卵のようなフワフワ感もない、油まみれなカチカチ焼き。
この世界の卵の衛生管理を知らないからしっかり火が通っていた方が安全だろうけど、いくらなんでも火が通り過ぎだろ。
卵焼きタイプもいいけど、今食べたいのはゆで卵を潰してマヨネーズを和えたトロトロ卵サラダが口溶けのいいふわふわ食パンに挟まった卵サンド。
この国のパンって、なんていうか詰まってるんだよな。
いわゆる、黒パン。
寒い地方なので、小麦よりもライ麦が育ちやすい。小麦粉にライ麦を混ぜ、干しぶどうのようなほんのり酸っぱいような爽やかなな香がして、ずっと重たい黒パン。
これを薄くスライスしたものが主食だった。
前世でいうところの、ドイツのパンみたいな。
ん? ドイツ? 前世?
俺は、この国の第二王子でアルベルト、十六歳……狭いアパートの一人暮らし、二十五歳の会社員……あれ?
第二王子、アルベルト……? 悪役令嬢ざまぁもの小説『婚約破棄令嬢は隣国の王太子にお持ち帰りされて王妃になりました』に出てくる、主人公令嬢のポンコツ婚約者でざまぁされる当て馬で噛ませ犬な王子では……?
ガンと頭を殴られたような衝撃が襲い、前世の情報が津波の如く押し寄せてくる。
物語でのアルベルト第二王子は昔からなにかとやらかすポンコツ王子で、操縦役に優秀な公爵令嬢ミレーナを婚約者にされて、学園で金髪巨乳な男爵令嬢と浮気の末、学園卒業パーティーで婚約破棄を宣言するお決まりのパターンから始まる。
激しい頭痛に襲われつつ、向かいの席に赤髪の婚約者、隣に金髪巨乳の美少女を侍らせているのをちらりと見た。
大学生の妹が遊びに来て部屋に置いていった小説をたまたま読んだ、その世界に転生してる?!
まずい! まずい! 断罪される?!
記憶は前世と今世が混ざり合い、頭は大混乱。
俺は思わず叫んだ。
「ミレーナ! お前との婚約を破棄する!」
朝食を求める生徒でごった返す食堂に響き渡り、俺は頭痛のあまり顔をカチカチスクランブルに突っ込んで気を失ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます