ありがとう、作者

遊び人

ありがとう、作者(タイトル作品)


俺はパソコンと睨め合いをしながら業務をする


前から俺の片思いの真美さんが通りかかった


「林君、おはよう今日も頑張ろうね」


「あ、真美さんおはようございます」


あ~いつ見ても真美さんは素敵な人だね。いつか付き合えたらな


俺がそんな妄想をしていると


真美さんは同僚の

川崎の席に向かい


両手を肩に添え話しかける。

俺よりも何倍も長い時間話しかけている。

くっ、悔しいよ情けない


「おい、林君私が助けてやろう」


え、誰?周りを見渡すも俺に声をかけてくる人は居ない

脳内に話しかけている感じがする


「そうだよ、君の脳内に話しかけているんだ」


意味がわからない

俺の脳内に俺とは違う誰かがいる?

いや多重人格な俺が今の俺と混ざっているのか?


「多重人格ではないが違う誰かは合っている私は作者だこの物語の作者だ」


作者?何を言っている

ここまで俺は虚言癖に陥ったのか。

そこまで追い込まれているのか


「何を言う作者だぞ

ここで証明したろう

よし、君を今から真美さんの事が好き!と言わせるぞ」


俺はなぜか座った状態から勢い良く立ち上がり


川崎の席にいたはずの真実さんが

なぜか俺の隣を通る


「真美さんのことが好きです」


言ってしまった

耳元でボソッと…


恥ずかしくて真美さんの顔も見れなかった


どうしてくれてんだよ


「いや、ただの証明をしてあげてるだけさ林君これで分かっただろ」


もうこんなんじゃ真美さんと付き合えないじゃん…


「そもそも、このままでも君は付き合えない順当に行けば正式なパートナーは川崎くんになるね」


言わなくても分かってます


分かりましたから


あなたが作者

よくわかんないけど信じますだから


俺に変な事しないでください


「嫌だね」


笑顔と狂気の入り混じった声で俺に囁いた嫌な声だ


「聞こえとるぞー、林君」


あれ待て身体が勝手に動く

おいどこへ行く


待てよ嫌な予感がした


「そう、嫌な予感がする場所へ行くぞ」


最悪だ、真美さんの席だ


真美さんはいつも通り清らかな顔でパソコン打っている


「真美さん、今日終わったら一緒に帰りませんか?」


なんてこと言うんだ作者…


「はい!いいよ林君」


え、?返事は意外なものだった


「言っただろ助けてやるって」


作者ありがとう!でも待てよ

これは元々俺に多少なりは好意を抱いてただけで作者のおかげでは


「そこまで言うなら君にすごいことをさせてやろう」


そのままあっという間に時が過ぎ

会社を帰る時間になり

俺は真美さんと一緒に帰ることになった


今朝では考えれないことだ

残業をしている川崎に笑顔を見せびらかせてやった

ざまぁみろ川崎  


川崎は不気味な笑顔で俺を見つめた


「真美さん」


嘘だろ、言葉が勝手に口から出る

作者やめてくれせめて

心の声だけにしてくれ


「嫌だ、それだと物語が動かないもんね」


どんな結末にしたいんだよ

いや、結末になると俺死ぬの?

そこまで書くの?


「そこまでは書かないよ君のためにそこまで長編を書きたくなるほどのポテンシャルは君にはないし、ね林君?」


なんだコイツ上から目線で

信じたくもないが

作者だったとしたら早く別の作品の

作業に行ってくれ


真美さんの方を見る


そうだった真美さんに声をかけたまま 何も言っていない


再び勝手に口が動く


「俺、真美さんの事がずっと気になってた好きです付き合ってください」


なんで、なんでだ

気付いたら告白のお決まりである

片手がそっと真美さんの方へ向けられていた


「え、私も林君の事が好きです

こちらこそよろしくね」


真美さんの温かい手は俺の片手にギュと握られた


成功したのか?え、要するに付き合ったって事?


「そうだよ、林君おめでとう」


ありがとう作者さん

今日はとんだ迷惑だったけど

これには感謝している

ありがとう


「どういたしまして」


ここで林君に言わなければならないことがある

でも言わないでおこう

俺は主人公のセリフだけを操れる訳では無い作者は物語も操れるのだ

つまり主人公である林君以外の登場人物のセリフ感情も…





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ありがとう、作者 遊び人 @asobibinin

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