聖なる表現者たちへ

さながわゆきの

聖なる表現者たちへ


 クリスマスは、孤高である。


 さて、今この文章を読んでいるあなたは、クリスマスという世界観に対して、どのようなイメージを持っているのだろうか。


 謎が多いサンタクロース。

 真っ赤なお鼻のトナカイ。

 子どもたちが作った雪だるま。

 クリスマスツリーを見上げるプレゼントボックス。

 耳の穴かっぽじって聴くクリスマスソング。

 赤と緑が入り混じったリボン。

 光り輝くイルミネーション。

 美味しそうなフライドチキン。

 彩り豊かなケーキとお菓子。

 手を繋いで並んで歩く一見幸せそうなファミリー。

 数日後に別れる哀れなカップル。

 死んだ魚の目をしている危ないサラリーマン。


 クリスマスは、意外と面白い。

 私はそう思っている。

 

 サンタクロースは、大ベテランの宅配便配達員。

 トナカイは、動物。

 雪だるまは、可愛い。

 クリスマスツリーを見て「これ片付けるん、大変やろうなあ」と思う。

 クリスマスソング、大好き。

 赤と緑、超好き。

 イルミネーションは、光。

 フライドチキン、美味しい。

 ケーキとお菓子、いただきます。

 ファミリー、末永くお幸せに。

 カップル、早よ起きろ。

 サラリーマン、いつもお疲れ様です。


 こんな感じ。

 ただの感想やないかい。

 

 クリスマスは、大変興味深い。

 なぜなら、クリスマスのイメージは、人それぞれ違うから。


 相変わらず目の前にある仕事を頑張る誠実な人。

 大切な人のために夜景が美しいレストランを予約する浪漫な人。

 プレゼントを必死に探し回る慌てん坊な人。

 イルミネーションを「夜空に瞬く星みたい」とほざく薄っぺらい人。

 サンタクロースのコスプレをして寂しさを紛らわす元気な人。

 クリスマスの都市伝説と陰謀論を繰り広げる知的な人。

 山下達郎『クリスマス・イブ』を聴きながら誰かを待つ演技をしている繊細な人。


 目を凝らせば、色んな人がいる。

 人間観察にもってこいの日だ。

 つまり、聖なる表現者たちにとって、クリスマスという世界観は、まさにネタの宝庫なのだ。


 それでも、あなたは自らの素晴らしい感性をひとりで抱え込み、クリスマスの飾りつけを黙々と片付けて、そのまま新年を迎えるのだろう。

 それで良い。

 それが良い。

 ただし、せめてあなただけの備忘録には、その感性を言葉にして書き留めてほしい。

 もし、何か名残惜しいものがあなたの頭をよぎるのであれば、今すぐそれを作品として表現してほしい。


 雨が降った。

 愛用している赤い傘を広げる。

 すると、雨粒があなたと私の声を包んでくれる。

 きっと、あなたはほくそ笑んで、静かに思い返す。


「クリスマスは、孤高なのだ」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

聖なる表現者たちへ さながわゆきの @yataiki15yukino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画