~サフルと観操記~IFの世界

ソウ=エターニッチ=サフル

IFの世界 クリスマスの一日(第七話の後日)

雪が積もり、田園都市は白い台地へと変貌していた。


「芽観、あんまり遠くにいくんじゃないぞ。いざとなったら軌道エレベーターに向かって避難だからな」


#分かったよサフル~! この星の雪って柔らかい〜!#


サフルはクリスマスなので、気候を調整して雪を降らせていた。

”寒くないか? なんだか私は凍えそうなんだ”


「じゃあ、ニット帽を被ってみるよ」

研究所へサンタカラーのニット帽を取りに戻った。


”助かったよサフル。まさか外がこんなに寒いなんてな”

急遽用意された気候調節は、不完全によりマイナス十度となっており……吐く息が、白く凍りつく。


「寒すぎるのは機械の故障かな。まぁ、これくらいなら俺は平気だからいいんだけど……芽観は何処に?」


白い毛並みは雪と混じり、目立つ赤い目は雪で隠される。

”どうやら軌道エレベーターのある方に向かっているようだ。遊ぶならそこが適切と判断したのではないか?”

観操と芽観は互いの居場所がなんとなく分かるのであった。


「そうか……なら俺たちはイルミで彩る工場でも見に行くか?」

サフルは、AIに急ピッチで指令を出した。


”それはいいな、サフルの好きなイベントを私も楽しんでみたかった”

「そう言ってもらえてよかった。ココアを飲んで体を温めてから行くか!」


ホッと一息。研究所にはサフルの好きな嗜好品で溢れていた。

(都市に文明のデータ残ってて良かったぁぁ)

心の中で過去の都市の人々に感謝をサフルはした。


気温は下がり続けていき、マイナス十五度に達した。

ニット帽だけじゃ足りないと判断したサフルは、サンタの温かい服を着ることにした。

「一週間前に用意しておいて忘れてた。思い出せてよかった~」

”まったく……サフルがうっかりなのは相変わらずだな”


外へと出れば、白く輝く雪に、金色に輝く光のカーペット

色とりどりに輝くドローンが二人を祝福し、クリスマスソングが鳴り響く


「自分で作ったのに、目で見るのはまた違うなぁ……」

観操にとって感想も言えないくらい圧巻だった。




三時間も二人は楽しみ、気温がマイナス二十五度を下回った頃

音楽の間奏で観操はサフルに伝える。

”そろそろ芽観と合流しないか?私達だけいい夢見ているわけにはいかないだろう?”

「夢見心地なだけに?」


二人は爆笑してから、軌道エレベーターへと向かった。

”なんか寒くないか……?”観操の触手が冷えてきていた。

それもそのはず、裏で気候調整装置が完全に壊れていた。


軌道エレベーターに着くころには、完全に猛吹雪になっていた。

「やばいなこれ……通信が途切れたし。芽観は無事なのか?」

”どうやら中で温まっているようだ。無事に避難場所として機能しているようだな」


凍える手で装置の前に立ち、軌道エレベーターの扉が開く


#サフル寒いよ~!早く締めて~#

全員で避難が完了した。

「これから緊急で宇宙へと向かう。しっかりと体を固定を頼む」

#もう~この寒さって異常だったんだ#


文句を言う芽観だったが、それは寂しかったからかもしれない。

”すまない。芽観も光の芸術を共に見よう”

#ふ〜んだ。観操とサフルはお楽しみしちゃって、思念がこっちにまで届いてたよ#

”それはその……私はサフルの妻だからな!子供が見る前に親として先に見ておくべきなんだ”

観操は慌てていたせいで、自分でも分からないことを口走った。

エレベーターの上昇中に軽口を二人でたたいていると、その間に集中していたサフルがやっと戻ってきた。


「原因が分かったよ。どうやら温度が一定になったら止まるはずが、雪が詰まって停止装置が壊れてたみたい。ミサイルで装置壊したから一週間後には元に戻るさ」


”じゃあそれまでここに私たちは残るのか?”

#サフルの考えなし〜。お腹がすいたよ~#

雪ではしゃいだ芽観は、お腹をクゥっと鳴らした。


「ちょっと待っててな。緊急用の食糧生成器があるからな」

#あっ……研究所のケーキが今日食べられない。ケーキィ#

サフルは罪悪感から、慌てて用意しようとしていたギャグを隠した。


”こんな状況なのに能天気すぎるぞサフルは。サンタで三体の三タイとか……ふふふ”

くだらな過ぎて観操は笑い、芽観もつられた。

#危機感なさすぎだよサフル~#


そんな二人にサフルはサプライズがあった。

「予定と違うけど……実はケーキがここにあるんだ!」

自信満々に床から出てきたのは……形の崩れたケーキ


#わぁ、美味しそう!頂きます# パクリ

サフルが予想外の出来事にあっけにとられている間に、ケーキは芽観の腹の中


「俺の分ないよ芽観。いつもは声かけるのに何で一口で……」

(せめて味わって食べて欲しかったのに……自信作が……)


しょんぼりとしたサフルを見て、芽観は機嫌が直った。

#サフルも落ち込むんだ~。私は一人で悲しかったんだからね~#

息返しに成功した芽観は、上機嫌で尻尾を振る。


”なら、雪合戦というのをやってみないか?私が審判をするから二人が戦ってくれ”

#観操ありがと~! ちょっとサフル悪かったって……そんなに落ち込まないでよ~#

犬の体でサフルに近づくと……


「仕返しだぁ!」

芽観に抱き着き、撫でまわす。

#くすぐったいよ~ あははははは#


そうして遊び、いつしか疲れてサフルは寝てしまった。



クリスマスの終わりが近づく頃

星空が瞬く、軌道エレベーターの一室で脳操虫の秘密の会話が

#ねぇ観操……こんな日々がいつまでも続くといいね……#

芽観は星に願った。

”ああ……念願の共生ができたんだ。この時が永遠に続くことを願おう”

二人は想いを共にし、静かな夜を過ごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

~サフルと観操記~IFの世界 ソウ=エターニッチ=サフル @Sou_Eterniche_Safuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ