三英雄は神と成る〜世界救って暇になったので神を目指します〜
水神コウキ
転生編
第一転生 転生先は多分金持ち
活気のある東京の表通りをおれは1人で歩いていた。
とても美味しい焼き鳥がある行きつけの居酒屋へ向かうためだ。
それも大きく飛び跳ねながら。
周りから見れば、テンションがおかしい人間だが……。
なんと今日、ずっと目標にしていた商談成功がついに叶ったのだ。
おれの作ったプレゼンが、素晴らしいと言ってくれて社長からボーナスまで貰えた。
おれが働いている会社は、結構小規模なので資金とかは他に比べればそこまでない。
しかし今回の商談成功のおかげで、確実に大きな利益が入ってくることが確定した。
「今日は何を頼もうかなぁ……」
いつもなのだが、何を頼もうか全然決まらない。
どのメニューも……。
ドン!
激しい衝突音と共に、おれの視界はひっくりかえった。
次の瞬間、地面に叩きつけられるような痛みを感じた。
目の前には、赤いものがベッタリとついた軽自動車が停止していた。
前方部分は大きく凹み、まるで人がぶつかったかのような壊れ方をしている。
道路の真ん中にいるのもいけないし、早くここから退かないと。
でもなぜだか体が思うように動いてくれない。
それどころか、身体中の感覚が徐々になくなっていくような気がするのだ。
もしかして……。
あんまり考えたくないことなんだけど……。
この車はおれのことを轢いたんだろうか……。
確かにそれ以外、考えられない。
誰かが通報してくれたのか、遠くから救急車とパトカーのサイレンが聞こえてくる。
周りには野次馬が集まり、凹んだ車とおれのことを見ている。
誰か助けてくれるわけじゃないんだな……。
目の前がだんだん暗くなってくる。
救急車は間に合わないみたいだ。
なんて平凡な人生だったんだろう。
喜んだことなんて、今日の商談成功とずっと楽しみにしていたトゥリッチ2が当選した時くらいだ。
そういえばトゥリッチ2でも全く遊ぶことができなかったな。
両親ともそこまで、仲が良かったわけじゃないからなぁ……。
おれの視界は暗転した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
目が覚めると、おれは知らない花畑にいた。
え?
目が覚めるってどう言うことだ。
おれは車に轢かれて⚪︎んでしまったはずなのに……。
周りの景色を見る感じ、助かったわけでもなさそうだ。
普通、病院とかにいるはずだからな。
遠くには大きな川と、小さな橋が見える。
橋の辺りには、白い服を着た人たちが列になって並んでいる。
なるほど……。
ずっと迷信だと思っていた三途の川にでもきたのかな……。
あの白い服を着た人たちは、おれと同じようになくなってしまった人たち……。
他にできることはなさそうだし、おれもあそこに並んだほうがいいかな。
おれは立ち上がると、列の方へ歩いて行った。
さっきまで、かなりの痛みを感じていたのに今は体が軽い。
それに月の重力だと思うくらい、ジャンプするとフーワンと浮き上がる。
落下スピードも遅く、本当に宇宙にいるみたいだ。
列に並ぶと、前にいたオバはんの死者に話しかけられた。
「あんたは事故で死んだのかい?」
「え? そうですが、どうしてわかるんですか?」
「私服でここにくるやつは、事故で死んだって聞いたよ」
「そうなんですねえ」
そう言われてみると、ちらほら普通の服で並んでいる人がいる。
前の人たちがどんどん橋を渡り、ついにおれの番になった。
橋を守っている門番みたいな人に軽くチェックをされるみたいだ。
特に怪しいものとかは持っていないはずだけど……。
「お前は事故死だな。転生のチャンスをやろう」
「転生?」
「そうだ。可哀想だからな。そこまで悪行もしてないようだし」
門番は鬼だった。
メガネをかけていて、サラリーマンのようなYシャツを着用している。
几帳面なのか、ネクタイをきっちりしめている。
あと、転生ってなんだ?
小説とかアニメでよくみる、あのお決まりの転生なんだろうか。
「理解力が低いやつだなぁ。つまり新しい人生を歩むことができるんだ!」
やっぱりそう言うことなのか。
確かに転生はしてみたいし、もしかすると異世界とかに行けるかもしれない。
「お願いします。転生、してみたいです」
「わかった。橋を渡って、左側にある“転生堂“に入って待っててくれ」
「わかりました」
橋を渡った。
その瞬間に、本当に死んでしまったと実感できた気がした。
左って言ってたからこっちか。
すぐ目の前に、小さなお堂のようなものが見えた。
多分、あそこで待っていれば転生ができるんだ。
楽しみだなぁ。
中に入ってみた。
中は埃っぽくて、きちんと掃除されていないようだ。
あんまり長居はしたくない場所だ。
さっさと転生をしたい。
しばらく待っていると、さっきとは別の鬼がやってきた。
今度は真面目そうな顔をしている。
さっきの鬼はタメ語で、なんかすごい嫌なやつだったからな。
「それでは準備ができましたので、転生先に送らせていただきます」
「お願いします」
鬼はお堂の扉を閉めた。
窓がついていないため、一気に暗くなってしまった。
暗いところは、別に平気なのだが今回はなぜだか嫌な感じがした。
すると、足元が急に光り始めた。
何かと思ってみてみると、足元に魔法陣のようなものが現れていた。
紫色で、厨二病が好きそうな感じだった。
そこまで魅力は感じないが、どこかかっこいいと思ってしまう。
もしかすると、おれもその領域に少しばかりは入っていたのかもしれない。
「ちなみに! 転生先がどのような場所でも、我々は責任を問いませんので!」
「え?」
「それでは、楽しい第二の人生をお過ごしください!」
目の前が真っ白になり、体がふわっと浮くような感じがした。
なんだか、とても暖かい。
まるで、母親の腕に抱かれているみたいだ。
感じたことのないほどの幸せな気持ちだ。
「オギャー、オギャー!」
明るい場所に出て、おれが初めて発した言葉はそれだった。
赤ん坊のような言葉しか、話すことができない。
それにベッドのような場所に乗せられている。
その横には、美しい黒髪と緑色をした瞳の女性がおれのことを見ていた。
とてもいい笑顔で、本当に美人だ。
「ラックちゃんは、本当に可愛いわねぇ」
「あぁ、そうだな。俺たちの天使だ」
「ぶー?」
姿は見えないが、男の人の声も聞こえてくる。
この人たちは、転生先の両親なんだろうか。
こんな美人の息子に生まれてくるなんて、きっとおれも美形なんだろうなぁ。
それに……。
天井にはとても豪華なシャンデリアが取り付けられている。
これは金持ちの家に転生したに違いない。
母親は部屋を出て行った。
窓から外を見ると、すでに陽はしずみ暗くなっていた。
まぁ、この世界に太陽な上り下りという概念があるか、どうかがわからない。
でも異世界だろうがなんだろうが、大体は同じだろう。
そうでなきゃ、これからのおれの生活が困る。
これから覚えていくしかない……。
すると今度は父親と思われる人物が近づいてきた。
父親は腰に大きな剣を刺している。
身長が高く、筋肉がついていて周りから見れば少し怖い人物だ。
でも本当に強そうな見た目をしている。
美人な母親と、強そうな父親の息子だなんてまさに完璧じゃないか。
母さんもそうだったが、父さんも少し高級そうな服を着ているし……。
純白の服に黄金の紐のようなものが付けられており、まるで貴族のようだ。
もしかすると本当に、貴族の家に生まれてしまったかもしれない。
鬼はどこに転生しても責任を取らないとか言ってたけど、こんなに幸せなら別にいいよな。
なんなら、前世よりいい生活ができるかもしれないぞ。
ウキウキしていると、下半身が濡れるような違和感を覚えた。
赤ちゃんだし、生まれたばかりなのかわからないけど座ることができない。
自分で確認することができない。
すると、そばにいた父さんが急に焦り始めて大声で母さんを呼んだ。
「ちょっと、来てくれー!」
「あら、どうしたの?」
「もしかすると漏らしてしまったかもしれない……」
「本当ねぇ。すぐにオムツを変えてあげなきゃ」
母さんは近くにあった棚から、前世でもずっと見ていたオムツを取り出してきた。
もしかして、おれは漏らしてしまったのか!
全然、そんな感覚はなかったのに。
無意識のうちに出してしまうなんて、まるで年寄りみたいじゃないか!
本当に最悪なんだけど……。
いくら、赤ちゃんに転生したと言っても、元々は24歳のサラリーマンだったんだぞ?
流石に羞恥心というものがあるのに……。
おれは母さんにズボンと、オムツを外されてバナナをモロ出しにされてしまった。
もう……
最悪だーっ!!
三英雄は神と成る〜世界救って暇になったので神を目指します〜 水神コウキ @Suijinkouki
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