Regalia外伝―過去の思い出―

もちうさぎ

過去世学園編 ① 8歳

第1話 学園でのひと騒動

        ―はじめに―

こちらは『Regalia ―風の記憶―』の外伝です。

本編よりずっと前、過去世で生きていた彼女たちの日常を描いています。


本編では描かれない、等身大の少女たちの姿をお楽しみください。


※外伝単体でもお読みいただけます。

気になった方は、ぜひ本編にも足を運んでいただけたら嬉しいです。


本編小説リンク

https://kakuyomu.jp/works/16818622176976330878

              ——もちうさぎ——

                

―――――――――――――――――――――――

□舞台

リリス帝国(大陸一の巨大帝国)


□8名共通

性別 女性

リリス帝国の次期騎士団長候補。

父親達はいずれも現役の騎士団長である。


14歳で行われる騎士団長素養試験を受けるため、

現在は貴族学園に通っている。

全員が幼馴染であり、親友。


□登場人物

フレイア

8人のリーダー的存在。快活で勇敢。

総騎士団長の娘。

赤髪。大剣使い。炎魔法が得意。


ウィロー

真面目で実直。副騎士団長の娘。

オレンジ髪。斧使い。土魔法が得意。


ネーヴェ

冷静で知的。

水色髪。槍使い。氷魔法が得意。


サンディ

元気なムードメーカー。

金髪。短剣二刀流。雷魔法が得意。


アクア

明朗で素直。

青髪。レイピア使い。水魔法が得意。


ミスティア

大人しいが毒舌。

紫髪。鎌使い。闇魔法が得意。


スピカ

優しく天然気味。

ピンク味がある白銀の髪。ロッド使い。光魔法が得意。


ウィンディア

温和で誠実。

緑髪。弓使い。風魔法が得意。


アイリス

リリス帝国の王女。聡明で柔和。銀髪。

皇位継承者。8名と幼馴染であり親友。


―――――――――――――――――――――――






朝日が眩しく輝く学園都市ラビリンス。


様々な年頃の帝国中の子供たちが将来のために勉学に励む場所。



次期騎士団長である8人も、ラビリンスの中にある学園の1つに通っている。


学園に通い始めて2年。

フレイア達は8歳になっていた。



ラビリンスの学園の中で最も歴史が古く、大きな貴族学園のその正門へ、続々と生徒達が登校してくる。



「ごきげんよう先生」


「ああ、ごきげんよう」


帝国の貴族の子息や令嬢が通うこの学園では、紺色に金糸のローブを纏う。


その制服の中でも、"白に金糸のローブ"をまとった生徒は、更に特別な意味を持つ。


帝国各都市を収める家系であり、帝国の防衛の要である騎士団長家系の子供。


他の生徒とは違い、学園と王城を往復し、7歳から14歳までの歳月を"騎士団長の素養試験"の為に学園に通っている帝国民の希望。


そんな重い期待を背負った、白いローブのフレイア達8人は、今日も元気に学園の正門をくぐっていた。



「ごきげんようフレイア様方。今日もがんばりましょうね!」



教室へと入ったフレイア達を、同じクラスの令嬢達が笑顔で迎える。


白いローブの8人の少女は、同年代の令嬢達にはまぶしく、研鑽けんさんを積む友人であると同時に憧れの対象のようだった。



「おはよう皆。今日は最初の授業って剣技だっけ?」

 

フレイアが明るく返すと、令嬢達が笑顔で頷いた。


「剣技かぁ…昨日訓練長にしごかれて体痛いんだけどなぁ」


サンディがふわああ〜とあくびをしながら呟く。


「まあサンディ様。昨日も帰ってから訓練を?さすがですわね」


令嬢達とフレイア達8人が和気あいあいと話しているのを、後ろから忌々しげににらんでいる男子生徒がいた。


「けっ…なにがフレイア様だよ…。おんなじ貴族のくせして。しかも女でキャアキャア言われていい気になりやがって…」


面白くなさそうに吐き捨てる男子生徒に、その横の男子生徒も同意する。


「親が騎士団長だからって、あんな白いローブきてムカつきますよねぇ〜」



好意的なクラスメイトが大半の中、フレイア達を面白くないと思う生徒も幾人かいるようだった。



こうして今日も貴族学園の1日が始まっていく。

このあと起こる騒動をまだ誰も予期していなかった。



―――



カァンッ!!!!!


「うあっ!!!」


ドサッ!!!!



「そこまで!!!」



剣技の授業中、教官が指名したペアが前へと出て木剣で模擬戦闘をしていた。



木剣を持ち、余裕の表情で吹き飛ばした相手の前に立っているのはフレイアだった。



「う〜ん。まだ踏み込みが甘かったかも」


木剣を見ながら呟くフレイア。



「〜〜〜〜この馬鹿力女っ!!!」


吹き飛ばされた男子生徒が急に声を荒げた。



「はあ?」


フレイアが座り込んだままにらみつけている男子生徒を見る。


「女のくせに馬鹿みたいな力しやがって!!授業だぞ!!ケガしたらどうすんだよ!!俺を誰だと思ってる!!父上に言いつけるぞ!!」


喚いているのはリリス帝国の商業を担う侯爵こうしゃく家の嫡男ちゃくなん


ガイルだった。


「おい!何を喚いている!早く立て!!」


教官の叱責も聞かず、ガイルは喚き続けた。

そのガイルの周りに、子爵ししゃく男爵だんしゃく家系の男子生徒4人が集まってくる。


「そうだ!そうだ!次期侯爵であるガイル様がケガしたら一大事だぞ!!」


「いつもいつも相手を吹っ飛ばしやがって!!」


口々に文句をつける男子生徒に、周りの令嬢達が憤慨ふんがいし始めた。


「帝国騎士団長の筆頭家系であるフレイア様に向かって、なんて口を!!」


「無礼すぎましてよ!!」


「うるせぇ!!女が口出しすんな!!」


大声を出すガイルにビクッと令嬢達の肩が震えた。


フレイアが目を細めて、鼻で笑う。


「学園の授業で起きたことを父親に?―へぇ。

随分と甘やかされてんだねあんた。

家系がなんの関係あるわけ?

その女の馬鹿力に負けたの、あんたでしょ」



嘲笑あざうようなフレイアに、ガイルが余計に眉を寄せ、指をさして叫ぶ。



「けっ!何が騎士団長家系だよ!!これみよがしに違うローブきやがって!」


「おいお前らいい加減にしないか!!」


教官が更に制止に入るも、もう歯止めがきかなかった。


グッ…


と木剣を握りなおすフレイア。


その様子に静かに見守っていた、ウィロー達7人が慌てて駆け寄った。


「まてフレイア!これ以上やったら…」


そう止めようとした7人と、怒りで顔が険しくなっているフレイアの耳に、一際大きい声でガイルの言葉が届いた。



それは、幼い8人にとって、地雷ともいえる言葉だった。



「お前らみたいな"女"に騎士団長が務まるもんか!!」



フレイアを制止しようとしていたウィロー達の動きが、ピタッと止まる。


「あ゙?」


「は?」


「何て言ったのかしら今」


「聞き捨てならない言葉聞こえたな」


「言っていい事と悪い事があるよね…」


「…」


「言い過ぎだよそれ」



急激に空気を冷やすような8人の目線を受けたガイル達が、一瞬怯むも言葉を続けた。


「騎士団長ってのはな!!かっこよくて強い存在なんだよ!!お前らみたいな"女"がこの帝国の次の騎士団長だなんて、他国から笑い者になんだろ!!!」


「そうだ!!騎士団長は男がいい!!」


「女はおとなしくダンスでも踊ってろよ!!」



口々に侮辱ぶじょくともとれる言葉を喚き続ける男子生徒5人。


あまりの言い方にクラスメイトの令嬢達も、怒りに顔を歪ませていた。



「……ふざけんなっ!!!」


カンッ!!!


フレイアが叫んだ瞬間、木剣を投げ捨ててガイルへと飛び掛っていった。


バコッ!!!!


「ぶへっ!?」


フレイアの拳がガイルの左頬に直撃したのを合図に。


「うらぁ!!!」


アクアやサンディが男子生徒を蹴り飛ばす。



「なにしやがんだ!!!」


負けずと男子生徒も顔を殴りに向かってきた。


グンッ!


その男子をウィンディアが後ろから掴み、引きずり倒す。


「いたっ!!!」

「女性の髪をひっぱるな!」


髪をつかまれたミスティアをウィロー引き寄せた。

そしてそのまま、髪をつかんでいた男子生徒を殴り飛ばす。


普段穏やかなスピカも怒りの表情でビンタをかまし、冷静なネーヴェさえも容赦なく男子生徒と格闘していた。


大乱闘ともいえるフレイア達とガイル達の殴り合い。


「きゃああっ!!」

「やめないか!!!お前ら!!!科目中だぞ!!」


令嬢達の悲鳴と、教官の怒号が剣技訓練場に響き渡った。



―――


「まったく…思い切り男子生徒を殴るなんて…総騎士団長方になんて伝えればいいのかしら」


ラビリンスの都市長であり、この学園長でもあるミスティアの母親がため息をつく。


先ほどの騒動のあと、8人は学園長に呼び出されお説教を食らっていた。


「フレイア以外の皆もです!フレイアを止めるどころか、全員で一斉にかかっていくんじゃありません…!」


頭が痛いのか、手を額へと当て首を振る学園長。


そして腕を組み、8人を険しく見下ろした。


「次期騎士団長たるもの、自制ができなくてどうしますか!」



むぅーーー。


学園長に叱られている8人は明らかにむくれた顔をし、柔らかい学園長室の絨毯じゅうたんの上に正座していた。



それぞれの顔や手のひらに傷が見て取れる。

僅かに髪も乱れていた。



「だって母…学園長。あいつらフレイアに…私達に暴言吐いた…」



ミスティアが母親へジト目で訴えかける。


「暴言?」



学園長が眉をひそめる。


「女のお前らが騎士団長なんて務まるか!!なんて言ったんだよ!!だから悔しくて…!」


「騎士団長は男がいいって…!そんなの酷いじゃないですかっ!」


サンディとアクアも口々に訴えた。


サンディがプクーっと頬を膨らましながら握った拳で、悔しそうに自身の膝をポカポカと叩く。




その言葉を聞いた学園長は、ふぅ…と息をつくと、フレイア達へ目線を合わせるように片膝をついた。



「理由はわかりました。

けれど皆。―貴女達は未来の帝国の護りなのですよ。あの男子生徒達だって護るべき対象。

そしていずれは、違う方面から帝国を支える侯爵達となるでしょう」



言い聞かせるようにゆっくりと、学園長は続ける。



「ここは貴族学園。全員がそれぞれの未来の役目のために研鑽けんさんしているのです。―それを忘れてはなりませんよ」



なだめられた8人は、徐々にしゅん…とした雰囲気になっていった。


「はい…。すみませんでした。学園長。二度とこんな事は起こしません」


フレイア達が悲しそうに頭を下げて謝ると、学園長が僅かに微笑んだ。


「もう戻ってよいですよ。来週は校外学習のための学園宿泊があります。しっかりと準備なさい」


「はい…」


そう答えたフレイア達は、静かに学園長室を出ていった。


―――


学園長室から出た8人は、

歩きながらため息をついた。



「護るべき対象かぁ。分かってはいるけどさ〜

。女のくせになんて言う奴、許せないじゃんか」



フレイアが頭の後ろで手を組みながら、ぼやく。 



「俺を誰だと思ってるなんてさ、フレイアにいうセリフじゃないよね。家の格でいったら、フレイアやわたし達の方が上なのに」


アクアがハッ!と嘲笑あざう。


「家の格を持ち出すのは良くないよアクア。

さっきのガイル達と同じになってしまうからな」


ウィローがなだめつつも、声にはイラつきが見て取れた。


「今度あの人達から文句つけられたら、言葉でぐぅの音も出ないほど追い詰めてやりましょう」


ネーヴェがフッと笑いながら目を細めた。


「それにしてもスピカやミスティアまで加勢してくるとは思わなかったよ。いつも止めてくるじゃん?ケンカとか」


サンディが2人を見て意外そうに声をかけた。


「さすがにねー?フレイアに対しても失礼すぎたし。あの言葉はフレイアだけじゃなくて私たちにも言ってたから…なんか、気がついたら」


ハハハ…とスピカが笑う。


「無礼なやつはぶっ飛ばす…」


ミスティアが静かにグッと拳を握った。


「思い切り殴るのはやめとこう。2時間お説教はもう勘弁だよ…」


ウィンディアが眉を下げ、太陽が傾いているのを眺めた。


―――


8人が帰ろうと身支度をしていると、ギイッと教室の扉が開いた。



「おいお前ら!!!」



ガイルとその取り巻きの4人だった。



うんざりした顔で男子生徒達を見る8人。


「なに?まだ何か用があんの?」


フレイアがはぁ…とため息をつき、さっさと帰ろうと歩き出そうとした。



「まて!!」


ガイルが行く手をはばむようにフレイアの前に立つ。


「勝負だ!!!」


ビシッ!!!と指を差して見下すように笑うガイル。


「はあ?勝負?そんなボロボロの身体で?」


フレイア達にコテンパンにされ、頬にアザのあるガイルと、傷がところどころにある男子生徒達がグッと一瞬詰まる。



「違う!!今じゃない!オレらの出した条件をクリアしたら、お前らを次期騎士団長だって認めてやるよ」


尚も偉そうにふんぞり返るガイルと、脇で笑う取り巻き達に、サンディとアクアの表情が険しくなる。


「おまえらさあ……!」


「まだ殴られ足りないわけ…?」


サンディとアクアが色めき立つのを、ネーヴェが制止した。



「いいわ。受けて立ちましょう。それで?どんな条件なの?」


「は?ネーヴェ本気!?」


フレイアが驚いてネーヴェを振り返る。


「受けて立つかわりに、こちらにも条件があるわ。貴方達の言う条件をクリアしたなら、私達にも勿論、他の女生徒にも二度と"女のくせに"なんて言わない。どうかしら?」


淡々と言うネーヴェの冷ややかな声に、ガイルが一瞬怯んだが、フンッと鼻を鳴らした。


「いいぜ。ちゃんとクリアしたらな!」


「で?そのクリアする条件ってなんだ?」


ウィローがため息をつきながら腕を組む。


「今度校外学習を兼ねて、学園で1日泊まる日があるだろう!」


取り巻きの1人が声をあげた。


「その夜、就寝時間のあと抜け出して、校舎の最上階の第5資料室にある"金色の彫像"をどっちが早く取ってこれるか勝負すんだよ!」


「なにそれ…そんなんでいいの」


バカバカしい…とフレイアが頭をかく。


「そんなん?お前ら校外学習の怪談知らねぇのかよ?」


ニヤリとガイルが笑った。



「…怪談?」


ウィンディアが首を傾げた。


「この学園の生徒に伝わる怪談さ!」


ガイルがおどろおどろしげに語り始めた内容は、こうだった。



『この学園の校外学習の時には、過去に亡くなった女生徒の幽霊が目撃される。


2年前の先輩が、校外学習の時にゆらゆらと白く揺らめく幽霊を目撃した。


噂では過去に事故で亡くなった女生徒が、学園の生徒をうらやんで学園に生徒が泊まる時に姿を現すと伝えられている。


そしてその女生徒を目撃した生徒は…』



「行方不明になるんだとよ!!!」


一際大きい声でガイルが叫ぶと


ビクッとサンディとアクアが肩をあげた。


「そんなのただの噂…確証もない…」


ミスティアがヤレヤレと頭を振った。


「ただの噂なもんか!その2年前目撃した生徒はそのあと学園に来なくなったらしいぜ…?」


しん…と教室が静まりかえる。



「どうだ…?これでもそんなもんって言えるかよ。怖いなら今のうちにオレらに泣いて許しを請ってもいいんだぜ?」


ハハハ!と笑うガイル達に、フレイア達は目を見合わせる。


「あんたらに許しを請うなんてするわけないでしょ。―わかった。その勝負受けて立とうじゃんか」


フレイアが腰に手を当て言い放った。



「じゃあ決まりだな。決行は校外学習の夜。就寝時間のあと、あの校舎の正面に集合だ。―逃げんじゃねえぞ!!」


ガイルが指をさして笑うと、取り巻き達も笑いながら教室を出ていった。


「なんか…変なことになっちゃったねえ」

スピカが困ったように呟く。


「あいつらの条件で完全に負かせば、文句つけてこなくなるでしょ…。とりあえず先生方や学園長には知られないように気をつけよ」


フレイアは頭をかきながら、幼馴染達を見る。


全員が頷き、帰路へと向かった。



―――


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