『卵』路上占い、あれこれ番外編【占い師は会社でも占う】

崔 梨遙(再)

食後のコーヒー 掌編671文字 いかがですか?

 あれは・・・僕が30代の半ばの時のことです。


 会社の新入社員の女の子が近寄ってきたのです。その年の新入社員は高卒の女子が2名だけでした。その時は、小さなベンチャー企業にいました。


『崔さん~♪、崔さんは占いが出来るんですか~?』

『うん、出来るよ』

『生年月日を伝えたらいいんですか~?』

『いや、個人情報は何も必要無いよ。誰の何を占いたいか? それだけ教えてよ』

『じゃあ、私の恋愛でもいいですか~?』

『いいよ、ちょっと待ってね。カバンから筮竹を出すから』

『え!? いつも持ち歩いてるんですか~?』

『うん。じゃあ、占うね・・・・・・うん、恋愛運はすごくいい。相思相愛、両想い、お互いの誠意や真心が通じ合っている状態になるわ。これは、親鳥が卵を温める姿に例えられるんだけど・・・ちょっと待って! この卦は妊娠の暗示もあるねん。8月からは妊娠しないように注意してや。せっかく入社してくれたのに、妊娠して辞められたら嫌やで』

『は~い! わかりました~♪』



 8月。


『崔さん~♪ 崔さんの占い凄いです~♪ 当たりました♪ 妊娠しました~♪』

『それはやめてくれって言うたやんか!』

『だって~♪ 出来ちゃったものは仕方ないです~♪』

『いやいや、世の中には避妊という方法があるねん。なんで避妊しなかったの?』

『だって~♪ 彼氏が~♪ ゴムつけるの嫌がるからです~♪』

『いやいや、じゃあ、ピルを飲もうよ』

『そこまでするの~♪ 面倒臭いじゃないですか~♪』

『避妊せずにして、どうしてたん? 避妊してくれないと嫌じゃない?』

『嫌じゃないです~♪ 見つめ合います~♪ 2人の世界です~♪』



『だめだ、こりゃ』




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