第十九話:見られてる?

あれから私は、どんどん具合が悪くなり、食事をすることなく次の日まで横になっていた。

ぼーっと、昇る朝日を眺めながら、今日からまたダンスでお金を稼がなければならない。

一晩寝たおかげで、頭はすっきり、気分もだいぶ回復していた。

「シェシェおはよう。昨日はごめんね。本当に。」


『ううん、大丈夫。それより気分はどう?。』


「気持ちは大丈夫。でも体がだいぶだるい。でもここにいても何にもならないから、今日からまたバリバリ稼ぐよ。」


『体がつらいのに、無理はよくないよ。』


「うん、でもお金がないと生きていけないのも事実だから。ここは踏ん張り時だよ。」


『本当にダメになったら、すぐに言ってね。』


「うん、ありがとう。さっ、パンたべて、練習して、広場に行こう。」


そう言って立ち上がり、布団をたたむ。パンを水で流し込み、練習を始めた。

数日間踊っていなかったせいか、体が少し重い。手足の動きの滑らかさも足りない。

必死になって練習する。今の精一杯を出すしかない。シェシェとの息もいまいちあっている気がしない。

「ごめんねシェシェ。私のせいでなんだかダンスの質が落ちてるね。」


『......。』


「シェシェ?」


『...ごめん。なんかちょっと気配を感じて。』


「え?それって、なんかまずい感じ?」


『そういうわけじゃない、殺気もないし。でもここ数日感じるんだよね。』


「うそ、何で言ってくれなかったの?」


『だって、マリーただでさえお金のことで弱ってたじゃん。言えないよ。』


「そっか、そうだよね。で、その気配って、大丈夫そうなの?」


『うん。さっきも言ったけど敵意は感じないんだよね。だからこそ、ずっと見られて理由がわからない。』


「うーん。どうすればいいのかな。」


『一旦、変に刺激するより、このまま練習して、いつも通り生活して大丈夫だと思う。』


「わかった。じゃあ、もう一回最初からやろう。せーの。」


誰かが私たちを見ているらしい。

国の中でも、治安のいい地方に来たのに、こんなことが起こるなんて思ってもいなかった。

でも私にはわからないし、シェシェも気にしなくていいって言ってたから、今は一旦気にしないふりをした。


その後、ある程度ましなダンスができるようになり、私たちは町へ戻り、いつもの広場でダンスを披露する。



ターンをした瞬間、時間がゆっくり進んだ。というより私がそう感じた。

視界がぼやけてる。

途中から、自分の体がどう動いているのかわからなくなってきた。これはやばいかも、でも間に合わない。体が傾き、世界が横向きになった。気づけばみんなの足が、壁から生えている。

最後に見えたのは、誰かがこちらに近づいてくる光景。何も聞こえない。私は瞼を閉じる。だんだん、だんだん、光が消え、暗闇になっていく。


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