第十五話:消えた財布
目が覚めると、辺りがうっすら明るくなっていた。どうやらいつの間にか、眠れていたようだ。眠れた安堵から、肩の力が抜ける。
ゆっくり体を起こし、落ち着いた気持ちで、辺りを見渡す。
が、次の瞬間、時間が止まった。目の前の光景が信じられずに固まった。
無い。布団の中の足元に、確かに置いたはずの財布が、無くなっているのだ。
勢いよく布団をめくり、辺りを探し、枕替わりの手持ちバッグの中まで調べた。しかし、財布は無い。体が冷え、血の気が引いていく。
どうしよう。生きていけない。人生で感じたことの無い程の焦りを感じる。
『どうしたの?』
「財布!財布がないの!どうしよう、どうしよう!生きていけない!」
『待って、落ち着いて。』
「無理だよ!だって、お金。お金だよ!無くなったの。」
『お金。無くなったの?』
「ねえ、シェシェどうしよう。どうしよう。」
『落ち着いて。一旦、落ち着いて。大丈夫だから、大丈夫。』
「うん......。」
『寝てる間に無くなったってことは、多分盗られたんだね。』
「だよね、多分。本当に、どうすればいいの?」
『大丈夫。また一緒に稼げばいいよ。私も頑張るから。』
「ありがとう。……はぁ、馬鹿だな、もっと私がちゃんとしとけば。本当、ごめんね。」
『気にしないで。私は人間と違って、定期的に食事しなくても大丈夫だから。それに、何より、マリーの命が無事でよかった。』
その一言に背筋が凍った。今、シェシェが言った言葉が頭の中を反芻する。その通りだ、もしかしたら死んでいたかもしれない。そう考えると、お金だけで済んだのはむしろいい事だったのかもしれないと思えた。
「死んでたかもしれないんだ、私。」
『そう。お金がなくなったのは残念だけど。私はマリーが生きててよかったと思う。』
「そうだね。そうだよ。そう思うことにする。」
『よし。元気ないと思うけど、町に行って宿をとって、そうじゃないと私も心配で寝られない。』
「え、でもお金が......。」
『あるでしょ、予備で、置いてたじゃん。』
急いでバッグを開くと、確かにお金があった。
「確かに、そういえばそうだった。良かったぁぁぁ。」
『とにかく、町に行くよ。』
シェシェにそう言われ、荷物を大急ぎでまとめ、引っ張られているように、慌ただしく街へと向かった。
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