踊り子の魔女

解田まご

踊り子の魔女

第一章:旅立ち編

第一話:見えない踊りて

もっとしなやかに、でも早く鋭く。

ステップのリズムを崩さず、足先から、指先まで、きれいに伸ばす。

毎日毎日、より力強く、より美しく、見ている人の心を動かせるように、ダンスの練習を続ける。


「はぁはぁ。......まだまだ。もっと柔軟性を上げなきゃ。」


そうして、また手をあげる。

毎日毎日。



ある日のこと、裏庭で踊っているといつもとは違う何かを感じた。何がどう違うのかは言葉にできないけれど、何かを感じた。


「い.....ど..ろ」

「なに!?」


耳元に声が聞こえ、体が固まる。見渡しても周りに人はいない。

体がすっと冷えていくのを感じ、あんなに出ていた汗が一気に引いていく。

でも怖いもの見たさでその場から離れることもできなかった。


「一緒に...」

「.....」

「一緒に...」

「.....」


耳を澄ませ息を殺す、でもまいち聞こえない。

一緒にまでは聞こえるのに。もどかしくて仕方ない。


「一緒に、何?」

「踊る」

「踊る...一緒......................!一緒に踊るってこと?」

「うん」


どうやら見えない声の主は、一緒に踊りたいらしい。

でも、私は一体何と会話しているのかわからないという不安もある。


「じゃあ、一緒に踊ろう。見えないけど。」


体がこわばっている。正直得体の知れないもが今そこにいるという事実に、恐怖心を感じている。

伸ばした手は、震え、呼吸も整わない。でも、今は願いを素直に聞き入れることにした。

とはいえ私には何も見えないから、この人も一緒に踊ってくれていることを信じて、腕を大きく上げた。


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