叡智の勇者~転生先は性知識という概念が奪われた異世界だった~

木の芽

Prologue 聖夜に新たな世界へ

 聖なる夜、クリスマス。


 そんなめでたい日に、俺は先ほどまで初めての童貞卒業チャンスを迎えていたはず。


 なのに、急に視界が暗くなり、次に目が覚めたら目の前におっぱいの大きい神秘的な女性がいた。


「こ、ここは……?」


「私は女神アルティニア。ひじり誠一郎せいいちろうさん、あなたは死んでしまいました」


 神々しい後光の差す女神様との出会いがしらの一言は、己の死についてだった。


「俺が死んだ……?」


「ええ。その死因が素敵でしたので、今回は選ばせていただきました」


 死因が素敵とはどういう意味だろうか? あまりに不謹慎では?


 そう思って彼女をにらみつけるが、視線の先に会った豊満な双丘。


 純白の布で二つの丘を包み込むように隠しているが、あまりの大きさに横乳が正面からでも確認できる。


 ……まぁ、いいか!


 眼福なものを見せてもらえた俺はすべてを受け入れる。


「突然、落ち着かれましたね……。えっと、説明しますと誠一郎さんには別の世界へと行ってもらいたいのです」


「別の世界……どうして俺が?」


「そうです! 誠一郎さんの死因が素敵だからです!」


 アルティニア様が笑顔で俺の手を握りしめる。


 やめてほしい。


 俺みたいな恋愛経験のない童貞はそんな眩しい笑顔を向けられたら好きになってしまう。


 睫毛まつげ長くてきれいだし、キラキラと輝く瞳も素敵だ。


 バクンバクンと鼓動が早くなっているのを感じる。


「誠一郎さんは今とてもドキドキされていますね?」


「そ、それは……はい」


「死因はまさしくそれです!」


「えっ……?」


「誠一郎さんは初めての女性の裸体の前に緊張しすぎたあまり、心臓が止まってしまったんです!」


 アルティニア様はとてもいいことのように語ってくれるが、俺は全然笑えなかった。


 と、ということは、俺は興奮しすぎて、死、死、死……!?


「ど、どうなされたのですか、誠一郎さん! 急に暴れだして!」


「離してくれ! 恥ずかしい! 俺は死ぬ!」


「もう死んでるんです!」


「そうだった!!」


 正論をぶつけられた俺は顔を手で覆って、その場にしゃがみ込む。


 ううっ……そんな死に方をしたなんて知りたくなかった……。


 これのどこが素敵な死因なのか。


 そんな落ち込んでいる俺の心の声を読んだかのようにアルティニア様は説明を続ける。


「実は誠一郎さんに向かってもらう世界は少し問題を抱えていて……それを解消するためにも誠一郎さんのような活力あふれる方が必要なんです!」


「……俺が溢れているのは活力じゃなくて性欲ですよ……?」


「せ、性欲も大切なんです! だから、誠一郎さん! お願いですから、異世界へ行ってもらえないでしょうか?」


 こんな美少女にお願いされているのだから、当然俺も応えたい。


 性格こそ変わらなかったが、これまで女性にモテるために運動に励んで肉体改造をし、ファッションを学んで自分を変えてきた。


 俺は可愛い女の子のためならなんだってできる……つもりだった。


 しかし、こんな情けない男が行くよりもほかにもっと適任の奴がいると思――


「【勇者】として世界を救えば、両手に花は間違いなしです!」


「…………」


「それにもし世界を救ってくださったならなんでも一つお願い事を叶えて差し上げますよ!?」


「――俺、やります」


 女神様がここまでお願いをしているのに、それを断るなんて男としてあり得ない。


 俺は必ず成し遂げてみせる。


 そして、お願い事を聞いてもらう。


「アルティニア様……それはもちろんなんでもいいんですよね?」


「は、はい! 世界を滅ぼすとか大層なお願いでなければ」


「聖誠一郎……絶対に約束を果たすと誓います!」


「あ、ありがとうございます! よかったぁ……これで私も一安心です」


 そんなにもひどい世界なのだろうか……。


 少しの不安を覚えるものの今の俺にとっては恐れるに足らず……!


 掴み取るんだ……あのおっぱいをこの両手で!


「…………」


 振り返れば、俺を見つめるアルティニア様の顔もなぜか少し赤らんでいる。……が、すぐに咳払いをした彼女は話を続けた。


「残念ながら私が介入できるのは誠一郎さんをあちらに送り込むまでなのですが……安全な場所にお届けするので安心してくださいね!」


「ありがとうございます!」


 俺の勢いある返事にアルティニア様はニコリと笑ってくれる。


 それだけでやる気が無限に湧いて出てくる。


 男とは単純なもので女の子に応援されて、微笑まれるだけで何でもできるかのような無敵感を得られるのだ。


「それでは誠一郎さん! 未来を失ってしまった世界をあなたの女の子への情熱で救ってきてください!」


 俺の足元から光が天に昇って、全身が包まれる。


「【勇者】となったあなたと再び会えることを祈っています!」


 その言葉を最後に、再び俺は意識を失った。





◇新連載です!

 今回はプロローグなので短めですが、これからバカ真面目に熱くてエッチな話を書きたいと思います!

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叡智の勇者~転生先は性知識という概念が奪われた異世界だった~ 木の芽 @kinome_mogumogu

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