能力主義の世界で無双する

hi-pi

第1話〈運命の出会い〉

「おらよ、これがほしいかい?欲しかったら取ってみな?ま、無能力のちみにはむりでちゅかね〜」

「あはは!言えてる!」

「いいぞもっとやれ!」


イジメ


今僕がされている事だ。僕のカバンが上空5メートルをフワフワと浮遊している。

「どうして僕がこんな目に………」

なんて言ってみるけど、理由なんて分かりきっている。

僕が能力を持たない、無能力者だからだ。

能力者かそうじゃないかなんてのは生まれた瞬間に決まる。それで人生何十年かが決まるのだ。

理不尽だと思わない?でもこれが現実。

イジメにも慣れた。

もういい。僕は自分で自分を諦めた。

でも、それでも……………能力が得られたなら。

アイツらを……見返してやりたい。復讐してやりたい。

そんな非力な僕の、非情な世界の物語。



「疲れたな………」

今日も一人で……独りで帰る。

夕暮れ空に浮かぶ影。イジメを受けて、部活も無いのに放課後3時間は学校に居る。

母さんはクズだったから父さんも別れたし、父さんも父さんで滅多に帰ってこない。

そもそも何の仕事をしているかも教えてくれない。

そんなことを考えると、公園に着く。

僕はブランコに腰をかける。

すると…………ベンチに誰かが寝そべっている。

(どうせ僕には関係ないね。)

そう思い、僕はベンチから目を離そうとする。

だけど、その人…………白髪の女の子から目を離せなかった。

彼女は、何故か僕にとって大事な人になるかもしれない、僕を救ってくれるかもしれない、そんなありもしない思考が何故か湧いてきた。

「大丈夫?」

気付けば僕は少女に話しかけていた。

「え?あ、だ、大丈夫……」

突然彼女のお腹が鳴る。彼女は赤面し、恥ずかしそうにもじもじし始めた。

僕は何故かその姿にかわいい、と感じてしまった。こんな気持ち、初めてかもしれない。

「パン、食べる?」

僕は明日の朝のために買っていたクロワッサンを出して、少女に勧める。

「………いいの?」

「お腹、空いてるんでしょ?いいよ」

「あ、ありがとう……」

彼女は恐る恐るパンを受け取り、一口食べると、一気にハムハムとあっという間に平らげた。

(お腹空いてたのかな………お腹なってたし当たり前かな。)

「お家は?」

「ない……」

「じゃあうちくる?」

自分でもなんでこんな行動に出たか分からなかった。

家にも誰かを入れたことなんてなかった。─────クラスメイト達が家に乗り込んできたとき以外。その時は運良く帰ってきた父さんが追い払ってくれたけど。

でも、この子を初めて見た時の感覚が頭を離れない。

これはきっと救われたいんだ。この子に。

認められたいんだ。無能力者の僕も誰かの役に立てるって。

本当に自己中心的な思考だけど、それでもいい気がした。

「行く」

彼女はコクリと小さく頷く。

「じゃあ行こう。」

「うん!」

今度は笑顔で大きく頷く。

本当にかわいい。

「名前は?」

「心春。よろしくね、えっと………」

「あ、千夏だよ。よろしくね」


これが、僕の人生を変えた、出会い。

この日を原点に、〈無能力者〉の復讐劇は始まるのだった。

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