⒢aℳE

YOUTHCAKE

悪夢

チャレンジャーである彼の視界は、あたり一面血色で覆われていた。まさか、ここまでの地獄絵図になろうとは、参加者のうち何名が、想像できたことだろう。それは、もはや、このゲームが開始する前から、主催者の皆にとって、わかり切っていたことなのだろうか?


戻れるならば、たった数時間前に戻りたい。そう思っている。ただ、そう思っても、時間は戻らない。彼は物陰に、隠れて、震えている。しかし、見つかった。


『ああ、ここにいたんだね。探したじゃないか。おいで、楽にしてあげるよ。』とそいつは言った。落ち着いた声色には似合わず、その身体の全体にはまんべんなく血しぶきがついており、良く光る真っ黒な目だけがその中から異様に輝いている。


『来るナアアアああああ!!』と彼は叫んだ。しかし、希望は通らない。彼は、もれなく身体をいとも簡単に吹き飛ばされた。まるで、風船を割るように。


遠のく意識、空が回るような感覚。そして、響き渡るアナウンス。


『残念ながら、チャレンジャー全員が死滅されましたので、ゲームは終了となりました。みなさま、お疲れさまでした。』


このゲームは、富裕層が死刑囚たちのために用意した、アクティヴィティに過ぎなかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る