ベリー・メリー・クリスマージャン! ― 超絶脱衣麻雀 ウルトラ外伝 ―
雀太郎
メリークリスマス!
12月25日。
街並みはクリスマスムードに包まれていた。
「メリー・クリスマス!」
サンタ姿の女性が、声を上げる。
フェミニンな顔立ち。金髪のハーフツインテール。
赤のサンタコスチューム。赤いブーツ。名札には『イヴ』と記載されていた。
イヴはカゴからアクセサリーを取り出し、
「メリー・クリスマス! メリー・クリスマス!」
通行人に手渡しする。
大量に
冷風に身を縮め、
「うー、さっむ……! 気合いのミニスカサンタも、毎年つらいのよ……」
現在は恒例のクリスマスバイト中である。
こんな格好をしている理由は、ただ一つ。時給がいいからだ。
それに、
「こんなにサンタが似合う女は、このイヴさんをおいて他にいないでしょってね! わっはっはぁ!」
風が強まる。
「きっつ……あー、彼氏ほしぃー……」
人混みの中で、ざわめきが起こる。
どうやら言い争いのようだ。ガラの悪い男が自分の足を押さえ、
「いたたたっ! 子供の足が当たって、骨が折れた
「すみません、すみません……」
子連れの母親が、頭を下げる。
男が足を強く踏み、
「謝れば済む問題じゃないメリよ! どうしてくれるメリか!?」
「子供がぶつかったのは謝りますけど、骨折は大げさな気が……。今だって折れたはずの足、使ってましたし……」
「オレは特殊な訓練を受けているから、平気なだけメリ」
「特殊な訓練を受けているなら、少し当たっただけで骨折しないでください」
「なんとぉ! 怪我をしたのは自己責任だというメリか!? そんな悪い親にはジャンキー的指導が必要メリね! メリー・クルシメル!」
「意味のわからない主張に、その変な語尾……まさか
「いかにもぉ! オレは雀奇団メリ男!」
メリ男は雀奇団特有の決めポーズをとった。
泣く子にダマ
親子が恐怖する。
周囲にも動揺が広がった。
そんな中でイヴは、余裕の笑みを浮かべ、
「待ちなさい、悪党どもぉ!」
「なにやつぅー!」
雀奇団の前に立ちはだかる。
「わたしはイヴ! 見ての通りプリティセクシーなサンタお姉さんよ!」
「今時プリティセクシーって……なかなかきっついやつメリね……」
「古典的な当たり屋だけには、言われたくないわよ!」
「オレたちの邪魔をするなら、容赦はしないメリよ? 雀奇団の恐ろしさを、身体に教えてやるメリ!」
イヴは戦闘態勢を取る。
クリスマスリース型の、
雀リング。
独立ネットワークで、
「勝負よ! 雀奇団っ!」
リングを起動し、
「セットアップ!
【
東一局 ドラ5m
東家 団員A 25000
南家 メリ男 25000
西家 団員B 25000
北家 イヴ 25000
イヴ 配牌
[3
――――――――――――――――――――
mが
――――――――――――――――――――
ドラ2。
イヴは口角を吊り上げ、
……きまった! 最高に格好良くきめたわ……!
麻雀には
街角パフォーマンスとして演劇をするように、上役から言われている。
……思ったよりもガラ悪いけど、さすが役者ね……。
とにかく予定通りの展開だ。
……美女雀士イヴが、クリスマスの主役をいただいちゃうぞっ……!
親は団員A。一打目を放つ。
打、2p。
「ポン!」
メリ男が[←222p]と仕掛けてくる。
打、發。
団員Bのツモ。
打、5p。
「ポン!」
メリ男が再び[555→p]と仕掛けてくる。
打、中。
速攻の鳴き。
……いかにもやる気満々を、演出しようってわけね……?
ツモ。
[35677m 1348p 358s 白][ツモ牌 7s]
打、白。
最初は適当に、字牌切りから入る。
「ロン!」
「えっ……!?」
メリ男、
[111222m 白][←222p][555→p][ロン牌 白]
「1、2mと2、5pが意味するのは12月25日……つまりクリスマス! ローカル役で役満となるメリ!」
さらに、
「白単騎はホワイトクリスマスでダブル役満! そして、そしーてぇ! クリスマス
脱衣モードが起動する。
「ジャンキータイムだメリ!」
メリ男が、プレゼントボックスを取り出す。
それをイヴに投げつけた。
箱が炸裂する。爆圧により、サンタ衣装が吹き飛んだ。
イヴは下着姿になる。
赤と緑のタータンチェック。ブラカップとショーツのウエスト回りを、白いファーが覆っている。
均整の取れたスタイル。膨らみのある、胸部が晒された。
「ムリクリ、メリクリ! ジャンキーズ!」
メリ男が雀奇団特有の、最高潮の舞で躍り狂った。
――――――――――
点棒移動
東家 団員A 25000
南家 メリ男 25000 → +96000 → 121000
西家 団員B 25000
北家 イヴ 25000 → -96000 → -71000
――――――――――
東二局 ドラ5p
北家 団員A 25000
東家 メリ男 121000
南家 団員B 25000
西家 イヴ -71000
イヴ 手牌
[66789m 23
ドラ2。
發は不要牌。ツモ切る。
「ポン!」
メリ男が仕掛けてくる。
打、3p。
[66789m 23
不要牌。ツモ切る。
打、中。
「ポン!」
メリ男が再び仕掛けてくる。
打、西。
發と中のダブル
……役者さん、やたら気合い入ってるなぁ……。
彼らはプロだ。麻雀の内容も、任せていいのだろう。
……見たことないマイナスだけど、ここからどうやって逆転するんだろ……?
きっと
……それにしても、だ……。
脱衣モードは演出過剰ではないか。打ち合わせにはなかったが、
……その分のお金は期待していいってことよね……!
ツモ。
[66789m 23
三連続の不要牌。ツモ切る。
打、白。
「それでいいメリか? 間抜けなサンタめっ! ロン!」
メリ男、
[678m 444p 白][發↑發發][中↑中中][ロン牌 白]
「小三元、發、中。親の40符4
――――――――――
点棒移動
北家 団員A 25000
東家 メリ男 121000 → +12000 → 131000
南家 団員B 25000
西家 イヴ -71000 → -12000 → -83000
――――――――――
東二局 一本場 ドラ5s
北家 団員A 25000
東家 メリ男 131000
南家 団員B 25000
西家 イヴ -83000
メリ男 手牌
[566m 3344678p
ドラ4。
467m、2345p。7種22枚が有効牌である。
面前だけでなく、34pは喰いタンのポン
イヴのツモ。
打、3p。
「ポン!」
メリ男が仕掛ける。
[566m 44678p
打、6m。
4-7m待ち
先手をとった。
好形、高打点。しかもたった二局で、214000もの点差。もはや勝ったも同然だ。
……それにしても、だ……。
この『イヴ』という女から、まったく闘志を感じない。
威勢が良かったのは、口上だけ。やる気があるのかも疑わしい。
……最初の一撃で諦めたか。まあオレにとっては、戦う気がなくてもいいがな……。
「リーチ!」
イヴからの先制リーチ。
打、4p。
6m、4pのシャボ待ちにしていればアガっていた。
……だが、そんな結果論っ……!
急にやる気を出しても、もう遅い。どちらにしても、こちらの勝利は揺るがない。
メリ男のツモ。
[566m 44678p
打、2s。
ノータイム。当然の王様ゼンツ。
……仕留めてやる……!
イヴのツモ。
「ツモ!」
イヴ、
[1122m 2255p 177s 白白][ツモ牌 1s]
「ふふんっ、どう? 12月25日に
「た、確かに凄いが……そんな役はローカルにも存在しないメリ!」
トリプル役満ならず。
リーチ、ツモ、一発、
――――――――――
点棒移動
北家 団員A 25000 → -2100 → 22900
東家 メリ男 131000 →-4100 → 126900
南家 団員B 25000 → -2100 → 22900
西家 イヴ -83000 → +8300 → -74700
――――――――――
東三局 ドラ中
西家 団員A 22900
北家 メリ男 126900
東家 団員B 22900
南家 イヴ -74700
メリ男 手牌
[234
ドラ2。
1234567m、1234567p、北。15種50枚が有効牌である。
綺麗な
団員Bのツモ。
打、白。
「ポン!」
イヴが仕掛けてくる。
打、8s。
ツモ。
[234
不要牌。ツモ切る。
打、發。
「ポン!」
「な、なにっ……!?」
イヴが再び仕掛けてくる。
打、2p。
白、發での二
……こいつ、まさか大三元を……!?
ツモ。
[234
打、2p。
1234567m、北、中。9種29枚待ちの
最効率は中切り。2pでは、6種21枚ものロスとなる。
……だが中は打てん……!
この点差とはいえ、大三元に打てば直撃64000点もの差が縮まる。
点数状況的に、イヴの役満狙いは明らか。いくらなんでも、
イヴのツモ。
ツモ切り、中。
……なん、だと……?
中はノータイム。一瞬の迷いもなく、ツモ切った 。
一体どんな手が入っているのか。
ツモ。
[234
打、3p。
中をツモ切れば、
再びイヴのツモ番。
ツモ切り、中。
中の裏目。まさか大三元のタネを、裏目にする輩がいるとは。
……何を狙っている? 逆に不気味だが……?
ツモ。
[234
……ぐぬっ、1pでツモアガリ……くそがぁっ……!
1p、ツモ切り。
「ツモ!」
イヴからの
[46p 44567s][←白白白][發↑發發][ツモ牌
「白、發、ドラ1。40符3
「は、はんっ! なんだぁ……なんだそりゃあ……!?」
中を受ければ、少なくとも小三元まではいけた。7
冬の大バーゲンセールである。
――――――――――
点棒移動
西家 団員A 22900 → -1300 → 21600
北家 メリ男 126900 → -1300 → 125600
東家 団員B 22900 → -2600 → 20300
南家 イヴ -74700 → +5200 → -69500
――――――――――
オーラス――
東四局 ドラ白
南家 団員A 21600
西家 メリ男 125600
北家 団員B 20300
東家 イヴ -69500
メリ男 手牌
[34m 678p 3444
ドラ3。
25m、2457s、白。7種22枚が有効牌である。
ドラ白の仕掛けが主体。状況を改める。
イヴとは195100点差。彼女が親番のため、子がアガるか親の
……改める必要もなかったな……。
もはや麻雀の点差ではない。ここからの逆転など、あり得ない。
イヴのツモ。
打、白。
「ポン!」
メリ男が仕掛ける。
[34m 678p 3444
打、3s。
2-5m待ち。
白、ドラ4。30符5
勝利への
先手、好形、高打点。好調が手牌に出ている。負ける要素など一切ない。
「リーチ!」
イヴからの先制リーチ。
打、1p。
来たか。当然ながらイヴの親番に、オリはない。ドラを切っての、特攻に出てきた。
……それも苦し紛れにすぎん……!
ツモ。
[34m 678p 444
ドラ引き。
8pも切れるが、58pは無筋だ。押す価値が、果たしてあるのか。
……いや、押すべきだ……。
この点差で、何に怯えるのか。アガリを逃し、親に
打、8p。
8pは通し。
……通ったか……。
しかしイヴの
出ていない場所は、
……いや待て! この布陣は……!?
すべての河を確認する。
……ない! ないっ! ない、ないっ……!?
12m、25p、7sの5種全部が
……こ、こいつまさか……!
ツモ。
[34m
打、4s。
4sも通っていないが、
……白がない今、7sはクリスマス役満への必須メンツ。7sで打ったら、三倍役満がある……!
4sなら構わない。例え
ツモ。
[34m
4s、連打。
……やつの危険牌ばかり引いてくる……!
こうまで続くと、疑わざるを得ない。
だが幸いにも、
……5mはまだある! あるはずだ……!
ツモ。
[34m
……ぐううっ、なんだとぉおおお……!
1mはクリスマス役満への、超絶危険牌。打つわけにはいかない。
メリ男の選択。
打、4m。
……これでいい! どうせ直撃以外じゃ、捲られっこないんだ……!
イヴのツモ。
打、
「な、なにぃいいいいいいーーーっ!?」
痛恨のアガリ逃し。
ツモ。
[13m
打、5m。
屈辱の合わせ打ちとなった。
「その迫真の演技……」
イヴが微笑み、
「やっぱり
イヴは手牌を覗く、
[11222m 222555p 77s]
1m、7sのシャボ待ち。
……でも7sじゃダメ……!
7sは
だからこそ、
「これが主役のツモだよ!」
牌山を掴み、
「メリィイイイーッ! クリスマァアアアースッ!!」
――
[11222m 222555p 77s][ツモ牌 1m]
「12月25日でクリスマス、ダブル役満!
親の四倍役満は64000オールである。
――――――――――
点棒移動
南家 団員A 21600 → -64000 → -42400
西家 メリ男 125600 →-64000 → 61600
北家 団員B 20300 → -64000 → -43700
東家 イヴ -69500 → +192000 → 122500
――――――――――
イヴ 122500
メリ男 61600
団員A -42400
団員B -43700
――
イヴは事務所に戻ってきた。
パイプ椅子に腰掛け、
「演劇も大成功だったし、今日はマジ頑張ったぁ……」
「おっ、イヴちゃん。おつかれ!」
「部長さん! 見てくれました、わたしの大活躍っ! お給料に期待してますからね?」
「わかってる、わかってる! この調子で後の公演も、よろしく頼むよ?」
「公演? やだなー、さっきやったばかりじゃないですか? 変な冗談はやめてくださいよ?」
「やだなー、君こそ変な冗談を。役者の方も来てくれたし、そろそろパフォーマンスの準備をするところさ!」
「え……? あの部長さん……メリ男って知り合いじゃないんですか?」
「いや知らないよ? 誰なんだい、それ?」
「うわぁああああああっ! ほ、本物の
ベリー・メリー・クリスマージャン! ― 超絶脱衣麻雀 ウルトラ外伝 ― 雀太郎 @jantaro-n
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