日記

――彼女の日記(3月5日)

今日は、公園で白い髪の男の子に会った。笑うと周りの景色まで明るくなる不思議な人。

「この花、あなたに似合っています」

あの言葉は、胸の奥を温かくしてくれる。

少し長い前髪が風で揺れて笑った時の彼の顔が、忘れられない。私も、思わず笑ってしまった。

彼と、約束をした。

「また、この場所で会いましょう」

この約束は私にとって、とても大切なものになると思う。

あの人と過ごす時間は、特別だ。

風の匂いも、光の揺れも。どれも、この人といるから意味を持つのだと思う。

また彼と花を見たい。



ーー彼女の日記(3月9日)

今日、彼に会った。

接客中に起こった厭な出来事について話した。

彼は、私の愚痴を真剣に聞いてくれた。

「また同じようなことがあったら、僕に相談してください。」って。

僕なんかが役に立てるかは分かりませんけど、と少し苦笑いをしながらそう云われて、しばらく言葉が出てこなかった。

優しい人だと思う。

優しい彼の隣にいると、こんな私でさえ優しくなれる気がする。

彼に出会えてよかった。

また近いうちに会えるかな



――彼女の日記(3月12日)

今日は、彼に和歌を教えた。

恋にまつわる歌ばかりだったから、彼は少し照れた顔をしていたけれど、

そんなところもまた彼の魅力だと思う。

和歌は佳い。

想いを優しくのせていってくれる。


いつか彼に、和歌を贈りたい。

花の中で笑う彼は、とても綺麗だから。




ーー彼女の日記(3月21日)

久しぶりに彼に会った。

いつも通り優しく笑っていたけれど、どこか疲れているようにも見えた。

話を聞けば、依頼の解決に難航しているようだった。

きっと頑張りすぎてしまう人だから、少し心配になる。

会う度に幸せをくれる彼に、何か恩返しができたらいいのにな。

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