805年の長安、唐代の経済と社会
長安の規模と特徴
長安城の面積は、9キロ✕8キロ=72平方キロメートル。長安は唐代(800年頃)の国際都市で、108の坊(区画)が碁盤の目状に配置され、朱雀大街が南北を貫く。城壁に囲まれ、宮城(大明宮)、皇城、東市・西市、平康坊(歓楽街)を含んだ。
人口は約100万人(『唐会要』)であった。農民、職人、官僚、商人、ソグド・ペルシア人など多国籍で構成されていた。
構造:各坊は約500m四方の正方形(面積0.25平方キロメートル)。108坊で約27平方キロメートルだが、宮城、皇城、市場、運河、曲江池(芙蓉園)などを含めて72平方キロメートルだった。
長安は計画都市で、坊の壁や門で区切られ、平康坊のような歓楽街は東市近くに位置している。長安の72平方キロメートルに相当するエリアを、東京で比較すると、
南北9キロは、東京駅を中心に、南は品川駅付近(約4.5km南)、北は巣鴨駅付近(約4.5km北)で、東西8kmは、東京駅を中心として、西は新宿駅付近(約4km西)、東は錦糸町駅付近(約4km東)である。
千代田区、中央区、港区(一部)、文京区(一部)、台東区(一部)、墨田区(一部)、新宿区(一部)で、東京駅、皇居、銀座、六本木、浅草、上野、新宿御苑あたりを含むぐらいの広大な城郭都市だった。
歓楽街の長安の平康坊(北曲:庶民的、南曲:高級)は、東京の歌舞伎町(新宿区)や銀座(中央区)に相当した。娼館「花月楼」(平康坊南曲)は、銀座の高級クラブや料亭に例えられる。歇山式屋根の豪華な花月楼は、銀座の和風高級料亭の「銀座小十」に娼婦の部屋がくっついたようなものだった。京都の芸者の置屋は料理は仕出しなので厨房があってレストランの広間も併設している唐の娼館とは少し違う。
市場は、長安の東市(500軒の店)は、東京の銀座や日本橋の商業エリアに似ている。芙蓉園(曲江池)は、上野公園や新宿御苑のような風光明媚な場所であった。
唐代の経済と社会
唐代(800年頃)の貨幣制度は、主に銅銭である開元通宝(かいげんつうほう)が使われていました。貨幣の単位は文(もん)で、1000文で1貫文(かんもん)と数えられました。紙幣はまだ一般的ではなく、商人による高額取引の際に利用される飛銭(ひせん)という手形制度が存在したのみです。
銅銭(開元通宝):
唐の主要貨幣。銅製、穴あき、1文≒200円(1.33ドル、1ドル=150円)。
1貫=1000文(20万円)。重量約4g/文(『唐会要』)。
飛銭:
初期の紙幣(手形)。商人や官吏が銅銭の運搬を避けるため、長安・洛陽の両替商が発行。
1000文の飛銭=1貫の価値(『新唐書・食貨志』)。
金銀:
高額取引用。金1両(40g)≒10貫(200万円)、
銀1両(40g)≒1貫(20万円)(『唐会要』)。
都市労働者の日当:約50文。年収に換算すると約15貫文。
一般的な奴隷の価格:10〜20貫文。200万円〜400万円。
上質な奴隷の価格:数百貫文。2000万円以上。
これらの情報から、現代の価値に換算すると、都市労働者の年収15貫文を現代の年収300万円と仮定した場合、1貫文は約20万円、1文は約200円と推定できます。これにより、各階層の収入と物価の換算が可能になります。
収入(年収)
農民:
15貫(300万円)。日当50文(1万円)×300日
(『新唐書・食貨志』)。
都市労働者・職人:
20~30貫(400~600万円)。東市の職人や商人
(『唐会要』)。
下級官吏:
30~50貫(600~1000万円)。地方官や書記。
高級官僚:
100~500貫(2000万円~1億円)。節度使や中央官僚(『唐会要』)。
高級歌妓:
20~50貫(400~1000万円)。
客の贈り物や指名料で高収入(『北里志』)。
物価
食料:
米1石(約60kg):約400文から600文。8万円〜12万円。
胡饼(パン1個):1文(200円)。
羊肉羹(1碗):30文(6000円)。
葡萄酒(1杯、標準):50文(1万円)。高級品100文(2万円)。
茶(1杯):10文(2000円)。
棗の砂糖漬け(1個):5文(1000円)。
絹1匹(約12.4m):約400文。約8万円。
衣類・小物:
絹1匹(12.4m):400文(8万円)。
紗羅の袍(高級):1000文(20万円)。
胡服(ソグド風):500文(10万円)。
翡翠の櫛:100文(2万円)。
銀の簪:50文(1万円)。
金糸帯:200文(4万円)。
その他:
浴場入場:2文(400円)。
馬(1頭):20貫(400万円)。
牛(1頭):10貫(200万円)。
比較(ローマとの対比):
ローマ:
パン1個2アス(250円)、ワイン1杯1~4アス(125~500円)、
銀のこし器90デナリウス(18万円)。
唐:
食料や衣類はローマより高価(米1石8~12万円 vs 小麦1モディウス1500円)。
絹経済の影響。
奴隷相場
一般奴隷:
10~20貫(200~400万円)。農民、戦争捕虜(『新唐書・西域伝』)。
美人奴隷:
50~100貫(1000~2000万円)。ソグド、ペルシア、日本出身。
高級歌妓:
100~200貫(2000~4000万円)。詩・舞・音楽の訓練を受けた女性(『北里志』)。
葵:
借金のため200貫(4000万円)で売られた。日本の芸能訓練が価値を高めた。
莎麗:
ソグド交易で150貫(3000万円)。胡旋舞の才能が評価。
瑠璃:
安禄山の乱後150貫(3000万円)。ペルシアの竪琴と美貌が価値。
比較(ローマとの対比):
ローマ:
普通奴隷100~300万円、歌の上手な女性800万円。
唐:
高級歌妓はローマの歌上手女性(800万円)より高価。
唐の国際交易と芸能需要が価格を押し上げ。
娼婦の種類となり方
種類:
高級歌妓:
詩、琴、舞で士大夫・官僚を相手。月1~5貫(20~100万円)。
例:翠蓮、玉梅(『唐詩紀事』)。
街娼:
平康坊の路地で客引き。1回10~50文(2000~1万円)。
貧困層が多い。
兼業娼婦:
酒肆・茶肆で働きながら客を引く。月0.5~1貫(10~20万円)。
例:花月楼の女給。
奴隷娼婦:
戦争捕虜や売買された女性。訓練後、高級歌妓や街娼に(『北里志』)。
娼婦のなり方:
奴隷:
戦争(安禄山の乱)、貧困、借金で売られた女性。瑠璃は乱後の奴隷、葵は借金(『旧唐書』)。
捨て子:
長安の貧民街で拾われ、娼館で教育。『北里志』に記述。
解放奴隷:
自立のため娼婦に。ソグドやペルシア女性が平康坊で働く。
貧困層:
没落した名家(芳蘭)や貧民の娘。生活苦や家族の勧めで(『唐詩紀事』)。
比較(ローマとの対比):
ローマ:
売春宿、街娼、兼業、高級娼婦。唐は多国籍(ソグド、ペルシア、日本)で、仏教寺院近くの娼婦や官営教坊の官妓が特徴。
平康坊の位置特定
娼婦(妓女)の生活圏は、長安の東市に隣接する平康坊(へいこうぼう)と呼ばれる歓楽街にありました。ここは北曲、中曲、南曲に分かれ、北曲は比較的庶民的で、南曲に行くほど格式が高かったとされています。
平康坊:
長安城北東、朱雀大街の東、春明門近く。歓楽街で北曲(庶民的)、中曲、南曲(高級)に分かれる(『北里志』)。
酒肆「月下楼」:
平康坊中曲、石畳の通りに面した二階建て。胡琴の音と提灯が特徴。
娼館「花月楼」:
平康坊南曲、静かな路地に位置。歇山式屋根、白漆喰、坪庭に竹と茉莉花。
翠蓮・玉梅の住まい:
東市南側の坊、市場に近い木造平屋。絹の幕と簡素な胡床(『唐詩紀事』)。
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