これから気の狂った話をします
島村ゆに
第1話 山の中の神社
平成2年くらいの時の話です。
当時私の周りではニューエイジと呼ばれる精神世界、今でいうところのスピリチュアルのブームが起きていました。中でもとびきり話題になっていたのは、近畿地方の山中にある、歴史の深いとある神社でした。
そこではビッグな芸能人が結婚式をあげたり、著名なアーティストが自分の作品を奉納するなど、とても有名な神社でした。
その神社のことに詳しい、登山経験も多数ある友人Eが、みんなでドライブがてら行ってみよう、という企画を立ててくれました。ただ、私たちが住んでいる場所からその神社までは、車で行くと6時間くらいかかり、途中にはとても有名な観光地があるので渋滞は確実でした。たとえ早朝出発しても、とてもじゃないけれど泊まりにしなければたどり着けない。そんな山奥にありました。
「朝の5時くらいに行くと、とても強いパワーを感じられるんだよ」
Eは彼女が持っているニューエイジに対する深い知識を披露しました。
私はあまりそういう方面には知識がなかったので、そういうものなのだな、と思いました。
「それなら朝5時に着くようにすればいいのじゃない?」
単純にそう考えてみると、逆算して夜0時に出発すれば、朝5時くらいには着けるはず。体力もまだ充分にあった私たちは、それを決行することにしました。
Eは都会しか運転したことがない、というので、山中は私が運転することになりました。夜中の高速道路や街中の道は空いており、とても快適に走行できました。
途中で休憩できるところもリサーチしてあったので、トイレ休憩なども問題なくでき、計画通り、朝の5時半くらいには到着できました。
「じゃあパワーをいただいてまいりますか」
Eは停めた車から降り、神社へ向かいました。
私は細く曲がりくねった峠道を担当したので、少々疲れていました。なのでそのまま運転席のシートを倒し、少し休憩しようと思いました。
ぱたりとシートを倒すと、フロントガラスを通じて美しい星空が見えました。標高1,000メートルもあるこの場所では、とても綺麗に夜空が見えます。ひとつひとつ星が数えられるほどの美しさでした。
車を停めた場所からは神社のシルエットが見え、その向こうに3本の杉の木が立っていました。真ん中の杉が一番高く、その左右に少し低い杉の木が立っていました。
その景色を見ながら目を瞑ったのですが、瞑ったはずの目の前に、同じ3本の杉が見えていました。
あれ? おかしいな? 目を瞑ったはずなのに?
そう思っていると、満天の星空からキラキラと光る何かが降りてきました。
光る点は真ん中の一番高い杉の木をとりまくように、らせん状に移動しながら降りてきます。
なんだろう? と思ってそちらに注意を払っていたところ
かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
とても美しい鐘の音がしました。その直後、目の前から杉の木が消え去り、踊るようなポーズの細く美しい漆黒の仏像が現れました。
驚いて目を開けました。目の前には満天の星空と、3本の杉の木しかありませんでした。
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