第7話 情報屋と地下データダンジョン

大阪の地下鉄の出口近く、遠藤紘一は次なる挑戦地である「地下データダンジョン」の入口に立っていた。通常のダンジョンとは異なり、この場所は情報そのものがモンスター化しているという。データが壁に浮かび、暗号やパターンとして攻撃してくる――戦闘力だけでは生き抜けない場所だ。


「情報戦か……俺にぴったりやな」


社畜時代、膨大な書類や企画書、社内データを処理してきた経験が、ここで活きる。頭の中でデータの流れを整理し、パターンを読み解くことが鍵となる。紘一は深く息を吸い、地下への階段を降りていった。


薄暗い通路に入ると、壁や天井に数列の数字やコードが浮かび上がる。それがまるで敵のように動き、触れると攻撃を受ける。紘一は慎重に足を進めつつ、暗号のパターンを分析。視覚情報と直感を組み合わせ、最適なルートを頭の中でシミュレーションする。


途中、モニター型の小型モンスターが出現した。データの塊を投げつけ、通路を遮る。紘一は反射的に回避するが、単純な力押しでは突破できない。ここで必要なのは、社畜時代に鍛えた「情報解析能力」と「マルチタスク能力」だ。


「まずは攻撃パターンを分析……次に回避ルートを確保……同時に奥のデータを読み取る」


紘一は瞬時に三つの作業を同時進行する。攻撃をかわしつつ、モンスターの位置と行動を分析し、通路に散らばる暗号を読み取る。社畜として培った multitasking 能力が、ここで真価を発揮した瞬間だ。


通路の奥で、情報屋型の中型モンスターが現れた。目の前には、膨大な情報の渦が渦巻き、正しい道を選ばなければ即座に行き止まりにされる。紘一は落ち着いて状況を整理する。


「焦るな……相手の行動パターンを読むんや」


モンスターは複雑な暗号を生成し、紘一を誘導しようとする。しかし紘一は冷静に読み解き、仲間探索者と軽くアイコンタクトで意思疎通。戦闘よりも連携が重要な局面だ。仲間がトラップを解除し、紘一は暗号解読を担当する。


「よし、このルートが安全やな」


互いに役割を分担し、協力して進む。情報屋型モンスターは攻撃パターンを変化させるが、紘一は冷静に暗号を解析し、正しい通路を選ぶ。社畜時代の経験で培った分析力と集中力が、ここで大きな武器となった。


最深部には、データの海が広がる空間があった。無数の情報が渦巻き、触れる者を圧倒する。紘一は慎重に進み、暗号を読み取り、通路を作り出す。仲間との連携が完璧に機能し、最後の障害を突破する。


データの渦が収束し、中央に浮かぶ光の球体が現れる。それは「情報の核」。触れると紘一のスキルに新たな成長が加わる感覚があった。


「なるほど……情報も、戦う武器になるんやな」


通路を抜け、地上に戻ると、夜の街の静寂が迎えた。地下データダンジョンは、戦闘力だけではなく、分析力、暗号解読力、連携力を試す試練だった。紘一は胸の奥で小さく笑みを浮かべる。


自由を手にした探索者としての旅は、戦闘だけでなく、知恵と判断力が試される挑戦の連続だ。地下データダンジョンを攻略したことで、紘一は次のステージへの自信をさらに深めた。


「さあ、次はどんな冒険が待っているか……楽しみやな」


光と影の中で培った力を胸に、遠藤紘一は新たなダンジョンへと歩を進めた。情報と戦略の探索者としての冒険は、まだ始まったばかりだった。

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