第5話 都市型ダンジョン・交差点

遠藤紘一は、次なる挑戦地――都市型ダンジョン「交差点」に到着した。ここは、ビル街全体がダンジョン化しており、通路や建物の配置が常に変化する動的迷宮だ。まるで街全体が生きているかのように、道や階段、交差点が移動し、どのルートも簡単には通れない。


「……こりゃ、地図だけじゃ無理やな」


紘一はリュックを背負い、周囲を見渡す。ビルの壁面にかすかに浮かぶ魔法陣、交差点ごとに異なる敵配置。全てを頭に入れて行動する必要がある。ここでは、単純な力押しは通用しない。空間認識と即断即決が求められるのだ。


入口から最初の交差点に差し掛かると、警告のように赤い光が点滅した。数秒後、目の前の通路が自動で閉鎖され、隣の建物から小型モンスターの群れが出現する。紘一は咄嗟に回避しつつ、攻撃範囲を計算。社畜時代、膨大な資料の整理と複数タスクの同時進行で鍛えた集中力が、ここで役立つ。


「まずは敵の配置を覚え、効率よく倒す……次に脱出経路だな」


紘一は短時間で敵の動きを把握し、隙を見て反撃。小型モンスターたちは一体ずつ倒され、通路が確保される。しかし、交差点は次々と変化する。右に見えた建物が、数秒後には左に現れる。天井の標識も無意味に揺れ、視覚情報が混乱を誘う。


「落ち着け、紘一……全体を把握してから動くんや」


紘一は立ち止まり、建物や通路の変化パターンを観察。モンスターの出現タイミングも予測しながら、最適ルートを頭の中でシミュレーションする。社畜時代の会議室で、複雑な案件を同時に処理した経験が、ここでは迷宮攻略の力となるのだ。


次の交差点に進むと、広場に巨大な自動販売機型モンスターが現れた。動きは遅いが、範囲攻撃が強力で、油断すると脱出路を封鎖される。紘一は即座に距離を取り、攻撃範囲外から反撃を仕掛ける。攻撃パターンを分析し、最小の動きで効率的にダメージを与える。


「よし、これでクリアや」


モンスターが倒れると、交差点の建物配置が再び変化。先ほどとは違う通路が開き、奥の階段へと続く。紘一は、変化する迷宮を見極めながら慎重に進む。都市型ダンジョンでは、空間認識能力が最大の武器だ。


途中、異なる方向から同時に小型モンスターが出現したが、紘一は冷静に判断。攻撃の優先順位をつけ、回避と反撃を同時に行う。社畜適応スキルで疲労が少なく、怒り覚醒の能力で攻撃力も高い。動きが機敏で、まるで迷宮自体を掌握しているかのようだった。


最深部にたどり着くと、交差点が集まった広場に出た。中央には光るオブジェクト――「迷宮の中心点」が浮かんでいる。紘一は慎重に周囲を観察し、最後の敵の位置を確認する。動的に変化する地形を読み切り、最適なルートで敵を倒す。


光の中心点に手を触れた瞬間、ダンジョン全体が静止し、元の街並みに戻る。紘一は深く息を吐き、肩の力を抜いた。都市型ダンジョンは、単なる戦闘ではなく、観察力と空間認識力、そして冷静な判断力を試す場所だった。


「……やっぱり、面白いな」


街の光を見上げ、紘一は微かに笑みを浮かべる。自由を手に入れた男の冒険は、単なる戦闘ではなく、知恵と経験を総動員する挑戦の連続だ。都市型ダンジョンを攻略したことで、紘一は次のステージへの自信を深めた。


自由を手にした探索者の旅は、まだまだ続く――。


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