眼鏡っ娘大学生&ラブホの幽霊VS邪悪な今カレVSサンタさん
天音伽
1.やなやつ!ゴムを買わせる最悪な今カレ!
あーあ、と思う。
聖夜。幸せそうなカップルを横目に、道を歩く。
街路樹は立派に着飾っていて、目にも鮮やか。ビルも明々とした明かりが眩しくて、私はため息を吐く。
なんで、この人と。
「あ、そうだ。ゴム忘れたわ。ナマでいいよな」
「いいわけないでしょ……」
「じゃあお前買って来いよ。俺、金ねーからさ」
ふと前を通ったコンビニを見て彼がそう言うものだから、私は肩を落とす。
私が買ってくるまで動くつもりはない、という表明なのだろう。その場で煙草に火をつけた彼に背中を向けて、私はコンビニの中へ。
黒に白で「0.01」と書かれたパッケージに手を伸ばし、こんなことにも慣れてしまった私自身にも、なんだか腹が立ってきた。
もとはと言えば、彼は大学の先輩である。
新歓コンパ。飲み会の帰り。よくある話だ。
私の不覚があるとすれば、私は大学一年まで誰かと付き合ったことがなかった初心な女であったこと、ただ一点。
「え、めっちゃいいじゃん君。可愛い可愛い」
今思えば彼の視線は私の胸に思いっきり向いていたのだが、まあ、そんなこと気づかないくらい舞い上がっちゃってたんだよねぇ……。
で、ベッドの上でなし崩しに付き合い始めて、今に至る。
「だーしゃりあした!」
最悪なことにコンビニの店員は男性だった。ゴムを持って店を出た私の背中に、視線が刺さるのを感じる。
「買ってきたよ」
「ん」
ん、じゃないんだよね。ひったくるなよ、ゴムの袋を。
結局甘い言葉を囁かれたのはその一瞬だけ。付き合い始めれば、ただの都合のいいおもちゃとしか思われていないのは、さすがに私でも分かった。
彼が他の女の子も囲っているのに気付いたのはすぐのこと。デートで呼ばれたかと思えばホテルに直行。あまりのことに別れようと口火を切ったら、
「は? 今さら?」
なんて言いながら肩をゴキゴキと鳴らされる始末。彼の友人は後ろ暗い連中が多いということも知って、恐怖心から逃げ出せないでいるのが今の私だった。
「あ! 流れ星!」
少女の声に、視線を空に向ける。
冬の透き通った空に、一条の星が流れ、私は小さく祈った。
――ああ、誰でもいいから、私と彼を引き離してくれませんか。
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