壊し屋

@shibakazu63

壊し屋

 この国は二十歳になると職業決定が待っている。今年二十歳になる御影秀(ミカゲシュウ)にも通知が来ていた。『あなたの職業は殺し屋です』いったい誰が一人一人の職業を決めているのか知らないが、秀は殺し屋となってしまった。学業は普通、運動神経も良いわけではないのだが——殺し屋。手紙の続きには時間、場所、持ち物として証明書(同封)持参のことと、服装はなんでもよいと記されている。追伸、時間厳守。夜の八時である。目的地に着いた秀だが、そこは古びたアパートだった。二階の奥の一室で、その男は待っていた。秀が扉を開けると、「一分二十秒遅刻!」それが影守悟(カゲモリサトル)の第一声だった。年齢は二十代半ばだろうか、少し髭を生やしている。その後、さっそく仕事であった。殺し屋の先輩の悟によると、最低一年くらいは悟のような先輩に付いて仕事慣れするらしい。依頼料は一人数十万から数千万とピンキリだが、悟は数十万の依頼しか受理しない。理由は難易度と言っていたが、要は額の高い人ほど仕事はやりにくいらしい。依頼は月に一度、多くても二度あるかないか、数十万でも生活はしていけるが、失敗すれば自らが社会から抹殺される命懸けの仕事である。しばらくは悟の世話になっていた秀だが、そもそもなぜ二十歳で職業を勝手に決められるのか、多くの国民は真実を知らないままでいる。これまで人々をコントロールしてきたのは、カミサマと名付けられた機械である。さらにその機械から伝達を受け、人々に伝える仲介役を務めるのは、半分機械化された少女である。数年後、ようやく一人前となった秀は、独立して仕事に励んでいた。しかし、この事実を仕事中に知り悩むこととなる。再び悟の下を訪れた秀だが、悟は内容を聴くと機械を壊しに行くと宣言する。再び二人の殺しならぬ壊しが始まろうとしていた。半分機械化された少女はヒナゲシといい、数年前から行方不明の悟の妹だったが、ミカナギという人物と臓器・皮膚移植をし、カミサマの守り役を買っていた。秀と悟はカミサマの破壊に向かう途中に二人と遭遇、悟とヒナゲシ犠牲の下、カミサマの破壊に成功する。しかし、生き残ったミカナギこそが、悟の真の妹であり、悟と相討ったヒナゲシがカミサマの本体であった。ミカナギもといヒナゲシは、カミサマがいなくなったことで洗脳から解放された。秀は、悟が始めからカミサマがヒナゲシの名前を語っていたと知り、破壊にやってきたのだと悟った。名前や臓器を変えたところで、兄妹(きょうだい)の事実は壊せない。

                    完

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