6年後の僕たちへ。僕たちの夏は、終わりの始まり。

@mizuki_nature

第1話 『サバゲー』の誘い

キーンコーンカーンコーン

 西日が差し込む教室で、知樹はカバンを肩にかけた。すると、聞き馴染みのある声に引き止められた。

 「おーい知樹ー! 帰ろうぜぇ」

 知樹は顔を見ずとも誰か分かる。幼稚園からの幼馴染の雄大だ。ちょっと小柄なやんちゃ少年。彼はサッカー部に所属していて忙しいため、中学校に入学してから一緒に帰ってなかったのだが、今日は珍しく誘ってきた。

 「今日部活ないのか?」

 「お、おう……」

 「まさか……」

 「榊原には言うなよ?」

 「ww分かったよ」

 榊原とは同じクラスのサッカー部。榊原裕也。同期のサッカー部員から怖がられてるが、女子ウケはいい「モテ男(自称)」だ。知樹と雄大は人がまだ少ない廊下を歩いていった。


・・・


 バス停で雄大が思い出したかのように言った。

 「あ、そうだ知樹さ、『サバゲー』って知ってる?」

 「何それ」

 「じゃあさ、サバゲーの説明、予想でやってみろよ」

 雄大はニヤニヤを抑えられていなかった。どうせ外れる予想に突っ込みたいんだろう。

 「うーん。サバのゲーム? 魚? いや、eスポーツか?」

 「魚のサバが出てくるのは分かるけどさ、なんでeスポーツが出てくるんだよwww」

 「いや、サーバーゲームかなって」

 「……やっぱり天才は視点が違うわ」

 「いや頭良くないし。そんで? サバゲーってなんだよ。急にどうした」

 雄大は鼻を高くして言う。

 「サバゲーっつーのはな、擬似の剣とか銃とかで戦って、生き残れ! っていうゲームだ」

 「へー」

 「なんだよ興味なさそうやん」

 「だって無理だもん。運動苦手だもん」

 「だーいじょぶだって! ほら、これ」

 雄大はチケットのような紙切れを2枚、ヒラヒラさせている。そこには『SURVIVAL GAME-生き残りをかけた戦い-』と書いてあった。

 「知樹さ、俺の親父が会社経営してるのは、知ってるだろ?」

 「おう」

 「その会社のサバイバルゲームのモニターになってくれって言われてさ。なんでも中高生を狙ってるらしいよ。それにしても親父…ネーミングセンスなさすぎるよな……(笑)昨日親父が友達1人誘ってきなーって」

 「そんで俺を誘ったわけだ」

 「その通り!」

 雄大は胸を張って言った。父親がゲームの主催者となれば、自慢したくなるのも分からなくない。

 「それっていつ?」

 「あさって」

 「え、早くね? 想像以上にカツカツだな。まぁ空いてるけど」

 「よっしゃ決まりだ! じゃああさっての9時30分にくまさん公園に集合な!」

 「公園から会場まで30分もかかるの?」

 「まぁな。親父がなんでここを選んだかは明確だろうよ」

 「……え、分かんない」

 「おい! くまさん公園から30分っていったらよぉ、駅ビルだらけだろうよ!」

 「あ、確かに」

 「お前はたまに鈍感になるよな〜」

 「ダメかよ//」

 「あ~っ!知樹照れてる〜」

 「うるせぇ!//」



 手元にあるこの2枚の紙切れが、2人の夏を180度変えてしまうことを、彼らはまだ知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2025年12月31日 11:00

6年後の僕たちへ。僕たちの夏は、終わりの始まり。 @mizuki_nature

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画