コント「こんなテーマパークは嫌だ」

薮坂

「ハゲと恐竜の類似点」


「おぉ、ここが例のテーマパークか! いやぁ、商店街の福引でタダ券当たるとは思わなかったよ。ラッキーだったなぁ。ここは恐竜がテーマのパークなんだよな。子供の頃から恐竜好きだからさぁ、正直アガるよなぁ! おっ、入口にキャストのお姉さんがいるな。よし、さっそく入ってみるか!」


「ようこそお客様! 魅惑のヅラシックパークへ!」


「ヅラシックパーク⁉︎ ジュラシックじゃなくて⁉︎」


「はい、ヅラシックパークです! テッテーテッテー テレテーレテッテッテー!」


「いやそのBGMはヤバいってジュラシックじゃないんだろ⁉︎ あれおかしいな、恐竜のテーマパークって聞いてたんだけど……」


「恐竜ではありますよ? サブタイは『夢と毛ボーの恐竜王国』ですから!」


「サブタイってこういうとこに使わなくね? あと夢と毛ボーってなによ毛ボーって!」


「え、言葉のとおりですけど……?」


「アタマ大丈夫なのコイツ? みたいな顔で見るのやめてくんない? 大丈夫だよアタマの方はな!」


「いや、だいぶ大丈夫ではないかと」


「どこ見てんだ今はアタマの中身の話してんだよ! お前ガワの話してんだろ! それに語尾に草生えてんのわかるからな、その言い方!」


「いや、中身も大丈夫ではないかとw」


「だから言い方ァ! 結局見えてんだよ草がよォ! 大体なんだ毛ボーって! フツウ希望だろ希望!」


「でも、お客様にとっては毛ボーが希望、いや本毛ほんもうなのでは?」


「クスクス笑いやめろ! あと視線が上向いてんだよ、失礼だなまだハゲてないわ!」


「でもさっき、正直AGAアガるって……」


「テンションがアガるって意味だ! 断じて男性型脱毛症のエージーエーじゃねーわ!」


「そうですか……、ごめんなさい。私、てっきりAGAのお客様かと。だってその方が王国をフルに楽しめますからね!」


「いやハゲ関係ねぇだろ⁉︎ ここ恐竜がテーマなんだよな? 恐竜王国って言ってたよな⁉︎」


「まぁ、そうとも取れますね!」


「そうとしか取らねーよフツウはよ! もういいよ、とにかく案内してくれ! 商店街の福引でチケットが当たったんだ。これ、正規チケットに交換してもらえるんだろ?」


「あっ、特別御招待のお客様ですか! 毛を長ーくしてお待ちしておりました!」


「首だよ首ィ! 長くするのは首ィ!」


「さっすがお客様! もうすでに首長竜の予習はお済みってことですねー?」


「ドヤるなよ別に上手くねーよ! それに特別御招待って何よ? さっきも言ったけど福引で当たっただけだからな?」


「実はですね、ある一定の基準を満たすお客様をスカウトしてるんです。ウチのパークにピッタリだと思いまして。そういうお客様でパークを満たす! それが社是でもありまして!」


「一定の基準を満たす? え、どう言うこと? 俺は何を満たしてんの?」


「まぁその、一定の毛準を満たしていないお客様……とも言えますね」


「毛準つった! いま毛準つった‼︎ 結局髪の話じゃねーか! ていうかハゲでパークを満たすってなんだよ、とんでもねぇ社是だなオイ!」


「弊社の社長が阿賀AGAと申しまして。同じ名前を持つ方々の幸せを願う、ということです!」


「AGAは症名だよ症名! 名前じゃねんだよ! それにハゲで場を満たしてもなぁ、残り本数のマウント合戦にしかならねんだよ!」


「まさに不毛な戦いですね……」


「あぁ不毛だよ! だからハゲは集めちゃならねーんだ!」


「さすが当事者は言うことが違いますね!」


「俺は当事者じゃねーよ⁉︎ いやもういい、ハゲから離れてくれ! あとさっさと案内してくれよ! あんたの役目だろ?」


「あぁすみません、申し遅れました。私、ヅラシックパークの名物キャスト! 人呼んで、ハートに噛み付く獣脚類! ジュラ紀? 白亜紀! 寒鰤かんぶりアキです!」


「カンブリア紀⁉︎」


「あっ、よく間違えられますけどアンジェラ・アキとは違いますからねー?」


「そこ間違わないなぁ絶対に! それになんだ、そのアイドルみたいな自己紹介フレーズは!」


「そりゃあ兼業アイドルだからですよ。弊パークは恥ずかしながら人手不足でして。ほとんどのキャストがアイドルグループAGA48のメンバーなんです!」


「AGA48⁉︎ 初めて聞いたわそんなアイドル!」


「有名曲で言うと『365本の髪飛行機』とか『Everyday,カツーラ』とかがありますよ? さすがにご存知ですよね?」


「存じ上げませんが? え、待てよあんたみたいなキャストが他にもいるってこと?」


「……そうですけど、あの、ひとつだけいいですか?」


「なんだよ?」


「私、一応センターです!」


「ドヤァ! じゃねんだよ! どういうリアクションしていいのか困るわ!」


「えっとー、私が『ジュラ紀〜?』って言うのでお客様には『白亜紀ー!』って返してもらって、そして最後は一緒に、」


「そういうリアクション聞いてねーよ! いや絶対言わないからな!」


「えー。恥ずかしがらなくてもいいのに」


「あんたに恥を知ってほしいわ! あのさ、もうそう言うのいいから早く入らせてくんない? 俺あんたと話しに来たワケじゃないからさ、いや疲れるわマジで」


「それじゃあ特別招待券を確認しますね。えっと、お客様はおひとり様でよろしいですか? これペアチケットなのに?」


「……あれだあれ、急だったんで友達と予定が合わなかったんだ」


「本当は?」


「……本当は友達いねぇんだよ恋人もな! 言わせんなよクソッ!」


「では特・別・に! 今日はこの私、AGA48のセンターを務める寒鰤アキがお客様のペアになってあげますね!」


「いやあんた仕事は⁉︎」


「あ! でもペアになったからって、恋人になったワケじゃないですから! そこ、勘違いしないでくださいねー? 私はみんなのアイドルなんですから!」


「絶対勘違いしないよ? むしろあんたがいろいろ勘違いしてるよ?」


「さて今からインパしますけど、まずはテーマパークと言えばコレ! かぶりものをしていただきます!」


「おう、あれな。某ネズミの王国の耳みたいなヤツな」


「はい! これは弊パークオリジナルのものです! なのでまずは自前のかぶりもの、外してもらえます?」


「……これは頭から直に生えてんだよ! 外すとかそう言う概念ねーんだよ!」


「外せない? 植毛ってことですか?」


「植毛でもねぇわ! とりあえずかぶるから、よこせそれ!」


「はい、お客様にはきっとピッタリ! パキケファロサウルスのかぶりものです!」


「……これ頭ぶつけ合うツルツル頭の恐竜のヤツゥ! パキケファロサウルスはマニアックが過ぎる! 大抵の人が想像できねーわ!」


「あっ……、お客様には似合いすぎて、あんまり付けてる感なかったですね……」


「まだ付けてないよ⁉︎ これナチュラルだからね⁉︎」


「じゃあ次はコレ。当パークの本日のイベントが網羅できる、パーク透けジュールです。はい、どうぞ!」


「透けジュールって書いてあるよ⁉︎ 透けてどうすんの、ねぇ⁉︎」


「今からだと……あっ! 大人気イベント『恐竜の卵を孵してみよう!』がちょうど始まりますね!」


「恐竜の卵? え、それどんなイベント?」


「文字どおり、恐竜の卵を温めるんですよ! 上手く行くと恐竜の赤ちゃんに出会えるかも? ってイベントです! キッズに大人気なんですよー!」


「いやいや恐竜の卵って何よ?」


「もちろん大っきい卵です! 何が生まれるかはお楽しみってヤツですね!」


「……ふん。デカいって、どうせダチョウの卵とかなんだろ? 詐欺イベントじゃねーか!」


「いえいえお客様、本物の恐竜の卵ですよ? 化石ですけど」


「ザ・不毛! 石を温めるだけのイベントォ!」


「ふふふ、ハゲにもピッタリですね?」


「いや何が楽しいんだよマジで⁉︎ これじゃ恐竜のテーマパークなのかハゲのテーマパークなのかわかんねーよ!」


「だからどっちもですって。だってとても似てるでしょう? ハゲと恐竜って」


「どこが似てんだよ⁉︎」


「進化の行く末が、絶滅!」





【閉園】




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コント「こんなテーマパークは嫌だ」 薮坂 @yabusaka

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