「揃う影」
人一
「揃う影」
「うぉぉぉぉぉ!今日は7月7日!7のつく日、イベント日!」
俺は朝も早くから愛車の軽バンに乗り、超特急で行きつけのパチスロ屋にやってきた。
もう既に整理券配布が始まっており、数人並んでいた。
俺がもらった整理券番号はまさかの7番。
777がもう揃って勝ったつもりで浮き足立つ。
まだかまだかと待ち続けること数十分。
いよいよ開いた店に、他の客たちとなだれ込む。
軍資金を握りしめ俺はお気に入りの台に座り、祈りながらサンドに入れた。
~4時間後。
俺の手には何枚ものお札が握られていた。
投資1万円に対して、24万7000円……約25万円が返ってきた。
初っ端から調子が良くどんどんと進み、昼を過ぎた頃落ち目を感じて撤退したらこの展開だ。
タイミングも完璧だ。
いつもは泣きながら二度と来ないと誓って、後にするパチスロ屋に向かって感謝の敬礼をして去った。
ショッピングモールで昼食を済ませて駐車場に戻る途中、なんとはなしに宝くじ売り場が目に止まった。
朝パチスロで勝った波が来てる!
そう直感的に感じてスクラッチを1枚だけ買った。
「よし来い1等~
お?おっ、お?お!2等だ!」
くじ売り場のおばちゃんに渡して現金を受け取った。
いつもは貧相な財布も今日ばかりは、ホッカホカだ。
もう浮かれすぎて宙を歩いている気分だ。
ルンルン気分でスーパーに到着した。
買い物を済ませレシートを貰うと、よくある一定金額以上のレシートを持参するとクジを引けるイベントをやってるようだった。
1週間分を買い込んだので3回引ける。
待ちきれないとばかりに早足で会場に向かった。
クジを渡してガラポンを回した。
白色……参加賞、ティッシュ箱セット。
白色……参加賞、ティッシュ箱セット。
「うぉぉ、あと1回だ……頼むぞ……」
金色!……特等、温泉ペア旅行券。
「よっしゃぁ!」
ガッツポーズを決めるが、俺は温泉には興味はない。
脳内は既に近所の金券ショップの場所を検索していた。
貰いたてホヤホヤの旅行券を早速換金して、再びそれなりのお小遣いをゲットした。
鏡を見る習慣なんて無いが、俺の顔はもう壊れそうなくらいの笑顔だろう。
夕食は大好きな牛すき鍋をたっぷりと食べた。
真夏だが関係ない、特上の肉をこれでもかと使った贅沢な鍋だ。
もうそろそろ時計は24時をさそうとしていた。
「はぁ、今日は最高だったな。大儲けだ。」
お札を数えながら昼間を思い出す。
「こんな幸運な日これまであったか?いやないな。人生初だ。」
秒針は着々と12に近づいている。
「ほんとに一生の運を全部使い切ったな(笑)これは(笑)」
0時。
時計の針がそう指し示した。
誰もいないはずの背後に、足音が1つ部屋に響いた。
「揃う影」 人一 @hitoHito93
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