第4話 リズ・エリサ
ぁ──ん。ここは?
目を覚まし開けると、見知らぬ天井が見えた。ふわふわの感触に包まれていて、何だかいい匂いもする。
ダンジョンの硬い地面とは違って、柔らかいな……。
辺りを見渡すと、まず見えたのはデカイ本棚。そこに立てかけられているのは、少女漫画などのいかにも女の子が見るような漫画だった。
もしかしてここ……女子部屋か?
「そうだよ、あ──おはよう。よく眠れた?」
「え」
そう言葉を漏らしたら、まさかの返事が返ってくる。
思わぬ返答に、カグはフリーズしてしまった。白銀の髪とその美人で可愛い顔立ちの少女がドアを開けて、こちらに向かって『おはよう』と言ったのだ。
中3のカグには、刺激が強い。
「えと、もしかして貴方が、俺たちを助けてくれた人ですか?」
残っている記憶を頼りに、その少女に質問する。
「そうだよ、私が倒れているキミを見つけてゴブリンから助けたの。ギリギリで間に合って良かったよ〜」
そう質問すると笑顔で答えてくれた。見知らぬ俺たちを助けてくれた少女に感謝しかないな。それと察するにこの部屋と寝ているベットは、この人のか。
なんだか──申し訳ない。
「あ! 自己紹介がまだだったね。私の名前はリズ・エリサって言うの。歳は18歳で高校生3年生、ダンジョンが出現してから潜り初めたから丁度1年立つかな? 最近有名になってきた
「俺は、
ん──? 紅猫団って最近テレビでも観たことがあるぞ。確か、未開拓の35層のボスを紅猫団で攻略したって聞いた事あるな。
って、このリズさん、ひょっとして凄い人?
「え? 今日初めてダンジョンに潜ったの! それであのトラップエリアに──最難だったね」
「あはは……でも良かったです。助けてくれなかったら、間違い無く死んでいました。本当にありがとうございます」
「うん……全然大丈夫だよ」
憐れまれてしまったか。それにしても本当に可愛いな。けど、ダンジョンで助けてくれた時は可愛いよりも美人で可憐という印象の方が強かった。
思わず見惚れ、顔を追ってしまっている。バレる前に目を逸らそうとしたら、リズの笑顔がゆっくり変化し、険しい表情になった。
「カグ君に言わなくちゃいけないことがあるの」
険しい表情と先程とは打って変わって真面目なトーンの声。
カグの頭の中にあった嫌な予感が、急にでかくなる。
「カグ君のお仲間、2人いたでしょ? その2人も同じく助けたんだけど、2人は今病院にいると思う。それで──さっき診断結果を知ったんだけど」
「はい……」
「真鍋君って子? その子、ゴブリンにやられた所が、当たりどころ悪くてね──死亡したって伝えられたの」
「え」
リズから伝えられた衝撃のひと言。カグは理解が追いつかないでいる。
「そんな……嘘、ですよね?」
「ううん、お医者様が言ってたの。傷が酷くて、病院に着いた頃にはもう……」
「真鍋が死んだ──ゴブリンにやられて」
俺は言われた言葉を復唱するも、信じられる事が出来ない。
「じゃ、じゃあ鰹節はどうなったんです?」
震える声で、リズに聞く。
「鰹節君は──幸い生きてるよ。でも後遺症が残っちゃたみたいで、動けない上、喋る事も出来ないって」
「嘘だ……鰹節まで。俺のせいだ、俺がダンジョンへ行こうなんて言わなきゃ良かったんだ。そうすればこんな事も無かったのに」
頭を抱え、後悔するも、何も考えられない。
「……ダンジョンでは、よくある事よ。トラップエリアを偶然見つけて、豪華な報酬目当てで進んでしまう人は多い。それに最初に出てきた敵を倒して油断しているところに、第二波が来てやられる人もいる。これがダンジョンの恐ろしさよ」
「クソ……俺がもっと強かったら、助けられたかもしれないのに──」
「でもびっくりだよ、1層にトラップエリアがあるなんて。調べたけど、君たちよりも前に入っていた人がいてその人の死体があったの。君たちは、そこを普通のエリアだと勘違いして入ってしまった。運が悪かったとしか言えない、だから決してカグ君は悪くないよ」
そんな優しい言葉に、俺は──情けなく大粒の涙をこぼす。
「オレは……あの時、Lv1の状態と初心者セットで買った武器で戦いました。ゴブリンが大量に出てきて、親友の2人がやられていく中、必死で剣を振って──それで親友を失って。俺はダンジョンが怖いです」
「そうだね、とても怖い思いをしたね。でも、カグ君は親友を助ける為に怖くても剣を振って戦った。本当に凄いことだよ」
ベットの布団をあげ、上半身を起き上がらせているカグの後ろに座ったリズは、カグの頭を優しく撫でる。
「でも、同時にダンジョンが楽しいとも思いました。命をかけた勝負でギリギリで勝つ感覚と緊迫した中、必死になって考えて行動出来るダンジョンが、まるでFPSゲームみたいで──だから、俺はダンジョンにのめり込んでしまうと思います」
どうしてだろうか、思わず思っていた事を全部言ってしまった。親友が死んでいるのに、この発言は駄目だろ俺。
恐る恐る後ろへ向き、リズの顔をうかがうと彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
「わかるよ、それ。私もそのギリギリで勝つ感覚と高まる気分が好き。だから今は最前線で命がけで戦ってる」
「リズさんも──?」
まさか共感してくれる人がいるなんて。
「だからさ──カグ君もおいでよ。最前線へ、高みへさ」
「え」
その意外な提案に、俺は目を見開く。
てっきり、俺は怒られるのかと思っていた。
「高みですか──? でも俺には」
「カグ君ならいけるよ、実はトラップエリアを映していた監視カメラがあったんだ。その映像を観させてもらったんだけど、才能あるよ。たった1人でゴブリンの殆どを倒したんだから」
「でも──」
「私が言うのだから、間違いないわ!」
その自信は何処から来るのだろうか。さっき俺はゴブリンに負けたばっかりなのに。
「しかも、今日潜った上にLv1でしょ? 天才だよ天才!」
そんなに褒められると、どう反応したらいいか分からないな。でも、あれは火事場の馬鹿力っていう感じだし……俺自身の強さではない気がするけどな。
「とりあえず今日は夜遅いし、ご飯作ったから食べなよ。消化の良いように、お粥にしたから」
「え」
本日、4度目の『え』。この家に来てからずっと衝撃が続いている。
リズさんの手料理が食べられる!?
おいおい、どんなイベントだよ。これ、鰹節に知られたら詰められるだろうな……はぁ。
鰹節の状態を知っているカグは、その事を思い出し、最高まで上がったテンションを最低まで引き下げる。
その時、カグの中で目標が決まった。
よし──決めた。
「リズさん──俺決めました」
ドアを開け、お粥を取りに行こうとするリズへとカグは決意を伝える。
「俺、100層まで行きます。そして、何でも叶うと言われている願いを、親友を生き返らせ、後遺症を無くす事に使います」
「……そっか、出来るよカグ君なら。応援してる」
この目標は俺の責務だ。ダンジョンへ誘ったことへの贖罪で、絶対に達成しなければいけない。
叶う願いは1つまで、となるとギルドでパーティを組んでしまったら、そのパーティ全員で決めた願いになってしまう。それだと俺の願いが叶えられないかもしれない。
最初に伝えれば問題無いかもだが、それだと俺の私利私欲の為に、攻略する事になり、100層まで命をかけてまでついてくれる人はまず居ないだろう。
だから俺はたった1人で100層まで目指す。そう、ソロプレイヤーとして攻略を目指すんだ。
でも、本音はきっともう一つある。
それは、ダンジョン攻略にハマってしまった事だろう。
戦略を立てて、命がけでモンスターを倒す。これ以上に楽しいゲームなんて、存在しないな。
だから、思う存分──楽しまなきゃ。
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