さぁさぁ、見てごらんなせぇ、読んでご覧なせぇ。
最近、あの浮世絵で名を馳せた東洲斎写楽大先生の新版を、とんと見なくなっちまってよぉ。
なんぞ、つまんねぇことになったじゃないか。
どうしちまったんだろうねぇ。気になるだろう?
実はさ。
まさかの写楽大先生をして、筆も取れないほどにしちまったもんがあるんでぇ。
それが何かって? 聞いて驚くんじゃないよ。
なんと――黄身返しの卵なんだとよ。
世の中ってぇのは、分かんないねぇ。
有名どころの気をひくもんが、芝居でも女でもねぇんだ。
黄身と白身がひっくり返った卵だってんだからねぇ。
おっと、姉さん。作り方を知りてぇのかい。
旦那に食わせてやりてぇなんて、妬けることを言ってくれるじゃないか。
いい女房だねぇ、こりゃ。
だがぁ、書いてある通りにして、上手くいくかどうかはお天道様にでも聞いとくれ。
へ?なんだい、兄さん。
話の結末を、ここで聞きなさるのかい。せっかちなお人だな、あんた。
そりゃ、てめぇの目で確かめてご覧よ。このすっとこどっこいめ。
仕方ねぇから、一つだけ忠告だ。
この話、奇想天外なお話でよぉ。
終いを読んだ後に、ぽっかーんと空いた口を天に向けたりするんじゃないよ?
口に入った卵で喉元を詰まらせても、こちとら、夢見が悪くなっちまうってもんだ。
騙されたと思って、読んでご覧な。