妄想メイドと波乱な日常
蓮蠱
第1話 もうそうメイドが現実に!!
今日は新しい事業の企画会議に参加している。
参加している、とは言ったが、正確には「席に座っている」だけだ。
「どっちもいいですよねー」
「ですよねー」
「決めるの難しいですよねー」
……難しくしているのは、あなたたちだ。
「佐藤君はどう思います?」
なぜ俺に聞いた。
今までの流れを見て、俺が“決める係”に見えたのか。
「こっちの方がいいんじゃないですか?」
勇気を振り絞って言った。
すると即座に返ってくる。
「でも、こっちもこのデフォルメはかわいいと思うんだよね」
……それ、さっきまで散々言ってたやつだ。
「そうですね」
もう何も言わないことにした。
この会議、結論を出さないという結論だけは完璧に守られている。
いいところを出し合っている“感”。
ちゃんと発言している“感”。
誰も選ばないことだけは、全員一致している。
「今日はもう時間ですし、また次回にしますか。次はどこまで決めますか?」
「じゃあ、みんなの意見まとめておきます!」
前回も、まったく同じセリフを聞いた気がする。
はじめは面白そうな案件だと思っていた。
だが、フタを開けたらこれだ。
意見を言わない人。
言っても選択肢を増やすだけの人。
減らす人は、いない。
これに意味はあるのだろうか。
会議室を出た途端だった。
「あれ、もっとこうしたほうがいいんじゃない?」
「それなら、こうするのもアリかも」
さっきまで沈黙していたメンバーが、廊下で急に饒舌になる。
いや、それを会議で言え。
それをやるから、会議に意味がなくなるんだろ。
最近、業務中はイヤホンが必須になった。
音楽を聴いていないと集中できない。
雑談ならまだいい。
だが、「自分が正しい」と証明したいだけの会話がつらい。
それ、本人に言えよ、と思う。
……もっとも、俺も言わずに心の中に溜めている。
人のことは言えない。
長い業務が終わり、俺は部屋に帰る。
いわゆる汚部屋だ。
別に困ってはいない。
ゲームができればいいし、掃除は週一でいい。
ここは俺の生活領域で、俺の勝手だ。
が、最近ひとつ思うことがある。
もし、二次元のお屋敷みたいにメイドがいたら。
帰宅した瞬間、
「おかえりなさいませ」
これだけで、生活の質は十倍になる。
しかも俺のいない間に部屋は片付いている。
掃除というタスクが、人生から消える。
ゲームの相手もしてくれそうだ。
下手だったら、なお良い。
短髪で、メイド服で、ひらひらしていて
軽く想像しただけで、もう勝ちだ。
……まあ、そんな世界があるわけがない。
現実は現実だ。
受け入れて、諦めて、社畜を続けるのが一番楽だ。
いつも通りコンビニに寄る。
弁当を買う。
これで毎日済む。楽だ。
もしこれがメイドの手料理だったら……。
想像するだけで飯がうまい。
出来立てが家にある人生。
ドリームすぎる。
結局、俺の妄想がすごいだけだ。
金もないし、雇えるわけもない。
今日もコンビニ弁当で終わりだ。
家に着いた。
飯を食べたら、今日唯一の楽しみ、ゲームだ。
寝るギリギリまでやり尽くす。
玄関に近づいて、違和感に気づく。
ゴミが外に出されていた。
……出した覚えがない。
嫌がらせか?
いや、袋の中身は確かに俺のゴミだ。
考えるのをやめた。
きっと疲れて無意識にやったのだろう。
俺、意外と優秀だし。
そう思いながら、扉を開けた。
「あ!! ご主人様、おかえりなさい!!」
思考が止まった。
現実だと思ってはいけない光景が、そこにあった。
洋風のメイド服。
短い髪。
華奢な体。
「は!!」
「いきなり大きな声出さないでくださいよ」
そして、何より。
部屋が、きれいだ。
「いや、誰だよ!!」
「あなたのメイドのココンですよ!!」
知らん。
だが、ひとつだけ確実に言える。
俺は、
ついに疲れすぎて幻覚を見る段階に来た。
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妄想メイドと波乱な日常 蓮蠱 @rusiruhu
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