第四断片 断章

 書庫の奥で、わたしは一枚の紙片を見つけた。


 どの写本にも属さない、孤立した断片。紙は古く、縁が焼けていた。焼却を免れた一部かもしれない。あるいは、別の文書の一部かもしれない。


 そこには、こう書かれていた。


> 殻は、卵を守っていたのではない。

> 殻は、卵がないことを隠していた。


────


※ 注釈四


 わたしは、この断片を記録すべきかどうか、迷っている。


 注釈官の仕事は、存在する文書を記録することである。解釈を加えることではない。わたしがすべきことは、この断片が存在するという事実を書き留め、出典不明と記し、分類を保留することだ。


 だが、この断片は、わたしに問いを投げかけている。


 卵がないことを隠していた。


 これが正しいのだとすれば、殻は、存在しない卵の代わりに置かれたことになる。卵という起源がなければ世界の成立を説明できないから、殻だけが用意された。中身のない殻。起源という概念を支えるための、空の容器。


 だとすれば、世界は卵から生まれたのではない。


 世界は、卵から生まれたと「書かれた」のだ。

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