第一断片 正文

> はじめに、殻があった。

> 殻は内と外を分かち、名づけられる前のすべてを包んでいた。

>

> その内に、熱があり、静けさがあり、まだ呼ばれぬ時間があった。

>

> やがて、光は殻の内側に満ち、

> 光が触れたところから、

> 天と地と、そのあいだの余白が定まった。

>

> 世界は、そこに在った。


────


※ 注釈一


 本文は創世を語っている。


 殻があり、内に熱と静けさがあり、光が満ち、天と地が定まった。

 世界の成立を述べる形式は満たされている。


 ただし、殻が割れる瞬間は記されていない。


 殻は「あった」と書かれ、

 世界は「在った」と書かれている。


 そのあいだに、破砕の記録はない。

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