知らない間に、なくなっていました

なかむら恵美

第1話





今日は、12月24日。

イブ。クリスマス・イブの日なんだけど、「町の洋菓子屋さん」。

いわゆる個人商店の、ケーキ専門店。ケーキ屋さんは倒産が相次いでいる。


そういえば、北本市。

わたしが住んる某地の近くに、昔「トレビアン」ってケーキ屋さんがあった。

今や「セキ」を乗り越え「ビッグ・エー」になっているけど、「セキ」より前。

まだ「イイヅカ」だった頃。

真っ直ぐに続く道。「コスモス」の看板に続く道の途中にあった店だ。

あの界隈は、街灯がそんなになかったように記憶する。

その暗さの中に「トレビアン」。

味はトレビアンかも知れないが、間口も狭く、店内も明るくなく。

おじさんが1人で切り盛りしていた。

3回ぐらい、買ったけど、(・・・・)

けどおじさんの風貌というか、姿勢がどうもイマイチ。

服が半ば薄汚れていて、少し猫背。猫背は仕方ないとしても、余りイキイキしていない。

詰め込んだパウンドケーキみたいな、バターケーキみたいなのが美味しかった。


ずっとご無沙汰状態が続いていたが、「そういえば」。

突然思い出し、行ってみたけど全くなかった。

影も形も形跡すらも全くなく、ただ空き地だけが転がっていた。


ああ、母さん。

あのお店は、どこへ行ったんでせうね?

やっぱり個人商店。それも食品関係って大変なのね。


                                  <了>

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知らない間に、なくなっていました なかむら恵美 @003025

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