[ カクヨムコン11参加作品】スクラップ.ド.プリンス&プリンセス 壊れかけの二人の小夜曲

石のやっさん

第1話 プロローグ

新宿、一番街の片隅に1人の男がうずくまる様にして座っている。


一見みすぼらしい浮浪者にしか見えないだが、もし、彼をじっくり見つめる者が居たなら、その状態であっても、かなりの美貌の持ち主だと分かるだろう。


薄汚れてくすんでいるが、それでもその金髪の髪はまだ輝きを放っている。


浮浪者の様になっても、その透き通るようなブルーアイはきっと見つめる者を虜にするだろう。


背は180cm位で程よく筋肉がついた体。


まるで、傾国の王子……そう見える筈だ。


それはあながち間違っていない。


彼は『元王子』だったのだから......


だが、此処は新宿、欲とお金にまみれた街。


歌舞伎町一番街。


そんな浮浪者みたいな男をじっくり見るような人間はなく、皆が目を向けずに早足で通り過ぎていく。


誰も彼の価値に気がつかず、侮蔑するように一瞬だけ、目を向けては去っていく。


負け犬の様な人間には関わらないで放置。


それが、この街での当り前の日常だからだ。


だが、今日は少しだけ、何かが違ったようだ。


◆◆◆


前髪を斬り揃えたロングの美しい黒髪に透き通るように美しい黒い瞳。


スレンダーな体型に透き通るような白い肌。


ほんの数年前までそこそこ人気のあるアイドルだった。


それが、この私、木之内なお。


新宿で、ほぼ外出しないで生活する中、久しぶりに外に出てコンビニで買い物をして帰る途中.......


いつもなら気に掛けない筈の浮浪者に何故か私は興味を持った。


髪はボサボサ……薄汚い浮浪者……だけど、何故か私は彼から目が離せなくなる。


何故か、この浮浪者の男が魅力的に見えてくる。


気がつくと私は……その男性に声をかけていた。


「そんな所でどうしたの?」


なんで声を掛けたのか、本当に分からないわ。


浮浪者に声を掛けるなんて.......


自分で言うのもなんだけど、私は性格が悪く人なんか助ける様な性格をしていない。


それに今の私には人に構っていられる程の余裕なんて無いわ。


『同情?』


私に限って、それは無いわ。


だけど、何故か私は彼から目が離せなくなった。


「気にする必要は無い……ただ途方に暮れていただけさ……」


「途方に暮れている? どう言う事なの?」


「行く宛が無くてね! やりたい事もないんだ……」


「そう? それならとりあえず私の所に来ない? 食事位出すし、暫くなら置いてあげるよ!」


「いいのか?」


「ええっ、構わないわ」


私はこんなに軽い女じゃない。


寧ろ、男なんて好きじゃ無い……悪い相手ばかり見て来たせいか、薄汚いとさえ思っている。



それが声を掛けるなんて……一体どうしたと言うのかな。


もう誘っちゃった後だし今更、引き返せない.......


「それじゃお言葉に甘えさせて貰おうかな」


「それじゃついて来てくれる?」


「ああっ」


本当になんでこんな事したのか自分でも分からないわ。


幾ら魅力的とは言え浮浪者.......


それなのに、私がこんな逆ナンパみたいな事をするなんて。


昔なら、きっと週刊誌の記事の一面にされそうだわ。




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